『西洋の児童文学を読む』B

・『西洋の児童文学を読む B 』(対象:中学生) 金曜18:40~20:00 担当 福西亮馬  

一人では読み飛ばしがちでも、仲間と音読しあって補います。また、要約を書いて理解を深めます。一つの作品を繰り返し読むこと、精読が人生のよりよい友となることを応援します。

テキスト:『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波少年文庫)

一種のタイムファンタジーであるこの作品。切なさを肯定して大人になる物語です。

トムは、弟のはしかのせいで隔離されます。遊び相手がいなくて退屈で仕方がありません。そんなトムを呼ぶかのように、古い大時計が真夜中に鳴ります。トムが起き出してドアを開けると、別世界である、古い庭園が広がっています。そこでトムはハティという少女と出会います。孤独なハティに共感を覚えます。真夜中になるたびに様子を見にいき、一緒に遊ぶようになります。隠れた主役である庭園が、二人のさびしさを癒やします。

「トム、庭園のむこうの方にはなにが見えるの?」

庭でトムを見上げるハティ。「油断大敵」と名付けた木から「川が見える」と答えるトム。

川が凍結したある日、二人は庭を出て、スケートの旅に出かけます。トムはこの時、時間が止まることを願っていました。あるいは「永遠にしよう」と。

「ほら、トム。イーリーの大聖堂の塔が見えるわ!」

ハティは嬉しそうに言います。庭で木にのぼった時とはちがい、二人でいっしょに、大聖堂にのぼります。そして、これまでスケートでたどった川全体を眺めます。すると、塔の番人の声が聞こえます。

「時間です。」

と。

トムを真夜中の庭へと何度も呼んだ、古い大時計。

時計の天使が指さす、「もう時がない」という黙示録の文言。

雷鳴が隠す、トムの嗚咽。

「時間の流れ」に対する切なさをテーマにした児童文学の名作です。

十代のみなさまのご参加をお待ちしています。

 

これまで扱ったテキスト:

  • 『はてしない物語』(エンデ、上田真而子ら訳、岩波書店)
  • 『白い盾の少年騎士』(上・下)(トンケ・ドラフト、西村由美訳、岩波少年文庫)
  • 『王への手紙』(上・下)(同上)