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文学部で学んだこと―100年先の世界のために
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ラテン語講習会のクラスだより

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文学部で学んだこと―100年先の世界のために

『山びこ通信』2016年度春学期号より、巻頭文をご紹介致します。

文学部で学んだこと―100年先の世界のために

山の学校代表 山下太郎

 私は英文科四回生の秋、思い切って西洋古典文学に専攻を変える決意をした。岡道男先生(当時の主任教授)のおられた研究室は、今はなき煉瓦造りの旧館二階にあった。専攻変更のお願いをするため、おそるおそる先生の部屋の扉をノックすると、万巻の書物がそびえ立つように見えた。先生は私の志願理由を頷 きながらお聞きになり、ご自身も独文出身であると打ち明けられた。私がラテン語もギリシア語も4時間コースを履修していないことを察知されると、「語学は慣れです」と口にされ、先生の実践されたラテン語、ギリシア語習得法――先生はこれらの言語を学部の一、二回生の頃に習得された――を次のように語って下 さった。まず、春休みの全期間、その言語の習得のことだけを考えて集中的に独学する。その際、文字通り寝食を忘れて取り組むこと。次に、新学期から開講される西洋古典の演習に出席し、辞書を引いて原文を読む訓練を続けること。

 私が目をぱちくりさせてお話を伺っていると、先生は書庫から両手でないともてないような大型の辞書や注釈書を机の上に運んでこられ、ギリシア語、ラテン語それぞれの単語の調べ方、注釈書の使い方を教えて下さった。時間にしてゆうに一時間を超えていただろう。そのころ先生は後期の授業でキケローの『国家について』を読んでおられたが、該当箇所のコピーを渡され、次回の授業から参加するようにと言葉を添えられた。勇んで参加した授業のレベルは私の想像を 絶するものであった。参加者は錚々たる院生ばかりが五,六人、学年順にオックスフォードのテキストを飛ぶように訳していかれる。ちらっと横目で覗いても、テキストに何も書き込みは見あたらない。私はといえば、原文のコピーを拡大してノートに貼り付け、余白に辞書で調べた結果をありったけ書き込むものの、辞書を引くだけで精一杯のありさまであった。先生はときおり「ここはこう訳してもよいですね」と簡単にコメントされるのみで、あっという間に数ページの訳のチェックが終了する。驚いたのはその先で、先生はもう一度最初から原文をご自身の言葉で訳していかれたのである。重要な箇所については「ここは(学問上) 問題の箇所で、後で説明します」とコメントされ、そのままどんどん先を訳していかれた。まるで日本語の訳を朗読されているかのように。こうして二度にわたる原文の訳読が終了すると、今度は細かな字でびっしりと書き込まれた研究ノートのコピーが配布された。そこには、解釈上の争点が文献案内とともに整理されていた。先生はこのノートに即して従来の学説を整理され、あわせてご自身の見解を開陳していかれるのだった。

 その後年月が流れ、大学院の修士課程、博士課程と進学する中、私の理想は岡先生のように流麗に原文を訳し、先生の流儀で研究ノートを作り、論文を発表することであった。すなわち、テキストの精読と研究史の精査からにじみ出てくる自分のオリジナルな解釈の萌芽を大切に育て、論文という花を咲かせること。しゃにむに勉強し、語学の問題以上に研究の壁に何度もぶつかったとき、私は先生の論文をどれだけ繰り返し読み返したことだろう。

 先生が研究対象とされた原文を自分の手で徹底的に読み砕き、その後先生の論文を何度も読み返すこと。この繰り返しによって、私は論文の書き方に関し、先生の「攻め方、守り方」が目をつぶっても浮かぶようになった(気がした)。それは、有名選手のフォームをまねて素振りを続ける野球少年と何ら変わらぬ気持ちであった。苦労の末修士論文を提出し、先生から「100年先の世界のために研究するように」と言われたとき、私は「普遍」という言葉を何度も心の中でつぶやきながら、熱いものがこみあげた。

 その後さらに歳月は流れ、私は文学部でラテン語を9年間教える栄誉に浴したが、この間父の病状の悪化を受け、家業であった幼稚園を継ぐために本務校 (京都工芸繊維大学)の職を一昨年辞した。愛着のあった文学部の授業(ラテン語4時間コース)のみ昨年度末まで続けさせていただいたが、この最後の年の授業では、前期に文法書を終え、後期にキケローの「スキーピオーの夢」を読むことにした。私にとって思い出深い『国家について』を締めくくる有名なエピローグである。熱心な学生たちとテキストを精読する時間は、文字通り至福のひとときであった。だが最終回の授業でhanc tu exerce optimis in rebus! (これを――汝の魂の力を――最善の仕事において発揮せよ!)という表現に出会ったとき、感無量の思いがした。ここで言われる「最善の仕事」とは、文脈に即して読むと res publica (国家)を守り発展させることであるが、このラテン語は広い意味で「公の仕事・事柄・問題」など多様な意味を内包する。引用したキケローのラテン語を吟味するうち「魂を込めて世のため人のために尽くせ」と読める気がしたのである。学問の世界から飛び出し、新しい仕事の継承と発展に心を砕いていた私にとって、この言葉は大きな励ましのように感じられた。一方で私は、文学部で学んだ philosophia (知を愛する心)を子どもたちと分かち合いたいという願いを込めて、幼稚園長就任と同時に、小学生以上の子どもたちを対象とした学びの場(山の学校)を創設していた。そこでは国語の教科書代わりにプラトーンやアリストテレースの作品を読み、講師と議論を交わす。キケローやセネカのラテン語を読み解くクラスもある。大人も子どもも無心になって学ぶ場がここにはある。

 今の活動の原点には、岡先生によってres publica (公の仕事)としての研究の道を示していただいたことへの感謝がある。文学の研究とは、無数の人々に読まれてきた res publica (公共財産)としてのテキストを守り、次世代に伝える仕事のことであった。他の学部の研究が、現実に役立つものを成果として期待されることが多いのに対し、文学部の研究はいつも「普遍」や「理想」をテーマとし自由に議論することが許される点で「学問」の王道を行くものである。だが、この道を生かすも殺すも結局は「人」次第なのだと思う。論文の数を競ったり競わされたりする態度は、「私的な問題」(res privata)に執着することを意味するのである。だが、学問の意義はそのようなところにあるのではない。同様のことが教育に関しても言えるだろう。人を育てる道とは、畢竟「私」を超えた「公」の存在としての「人」を育てることである。再びキケローの言葉に耳を傾けるなら、res publica と呼びうるものは時空を超え、永遠に存在し続ける。また、人間にはそれぞれの立場でこれを守り育てる道が開かれている。今私は論文を書く者ではないが、「100 年先の世界のために」という志は、新しい仕事の中で変わらぬ意味を持ち続けているのである。

(山下太郎 京都大学文学部100周年記念誌所収、2006.6)

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7〜8月イベントのご案内

2016年7〜8月のイベントをご案内致します。会員に限らずどなたもご参加頂けます(いずれも無料です。)。
定員がございますので必ずお申し込み下さい(※)。
※事前にお申し込みの無い方、また、対象外のお子様は、当日お越しになってもご参加頂けません。
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●何でも勉強相談会
・7 /25(月)18:30~21:30
・8/29(月)18:30~21:30

対象:中学・高校生
場所:山の学校教室
担当:浅野直樹・山下あや
*講師が勉強や進路の相談などを幅広く受け付けます。事前にお申し込み下さい。

 

●将棋道場(新規のお申し込みは現在行っておりません ※1
7/11(月)16:00~18:00「トーナメント大会(予定 ※2受付終了
8/29(日)16:00~18:00(受付中。残り僅少)
対象:小学生
座主:中谷勇哉
定員:先着20名
(※1. 道場では級の認定を行い、毎回継続的な指導を行っています。「昇級表(対戦カード)」をすでにお持ちのメンバーだけでも毎回キャンセル待ちが出ますため、新規のお申込は現在行っておりません。あしからずご了解ください。
(※2. 「山びこ通信」同封のチラシでは、トーナメント大会は「9月予定」と表記しておりましたが、参加者からの希望もあり、7月の予定となりました。)
*事前にお申し込み下さい。

●オセロ教室
・8/20(土)9:30  – 11:30
対象:小学3年〜中学生
場所:第三園舎
講師:中森弘樹
定員:先着20名
★ 講師自己紹介
オセロ六段、2007,2010,2011年度オセロ近畿・北陸名人。
関西選手権2015 優勝。
京都大学日本学術振興会特別研究員(PD)。

概要:
みんな一度はやったことがあるオセロ。
このオセロ、だれでも手軽にできるゲームですが、
「覚えるのは一分、マスターするには一生」
ともいわれていて、じつはとっても奥の深いゲームだったりもします。
この講座では、オセロで勝つためのコツを分かりやすく解説し ます。もちろん、今回お話するコツをマスターするだけで、 まわりの家族や友達にはぜったいに勝てるようになりますよ!というわけで、みんなで楽しくオセロを学びたいという人も、一人でこっそりオセロを強くなりた いという人も、ぜひ気軽にオセロの話を聞きに来てくださいね。

英語特講
・7/11(月)18:40~20:00
・8/22(月)18:40~20:00

対象:中学・高校生
場所:山の学校教室
担当:山下あや
*それぞれの生徒に応じた問題を用意し、時間内でひたすら問題を解き続けてもらいます。それぞれの答案の採点をその場でしながらコメントしていきます。
*事前にお申し込み下さい。

●ひねもす道場(1~2年生)※1
・7/6(水)16:00~18:00受付終了
対象:今月は、小学1~2年生対象です。※2
場所:プレイルーム
担当:梁川健哲
定員:10名
※1. 残り僅少(毎回キャンセル待ちが出ます。お申し込みはどうぞお早めにお願い申し上げます。)
2. 低学年(1~2年)の部、中・高学年(3〜6年)の部を、それぞれ隔月で開催しております。
※ひねもすとは、紙を丸めて作った大小2種類のパイプを繋げて作る工作です。部材そのものから自分で完成させる楽しみを味わうことが出来ます。

論語の素読・勉強会
講師都合のため、7,8月は開催を見合わせます。
 

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6月イベントのご案内

2016年6月のイベントをご案内致します。会員に限らずどなたもご参加頂けます(いずれも無料です。)。
定員がございますので必ずお申し込み下さい(※)。
※事前にお申し込みの無い方、また、対象外のお子様は、当日お越しになってもご参加頂けません。
event2016-6

●論語の素読・勉強会(※)
6
/11(土)8:30〜11:00
(※お申し込み時の注意:「素読のみ
の参加か、「素読・勉強会両方の参加かをご明示下さい。
対象:小学生
場所:山の学校教室
担当:(素読 8:30〜8:45)山下太郎、
(勉強会 9:00〜11:00)山下あや
定員:先着15名

*素読では、毎回論語の一節を紹介し、参加者皆で声を出して読みます。
*勉強会では、各自が課題を持ち寄り、講師が監督する中、異なる学年間で教えたり、教わったりしながら、自発的に学び合う時を過ごします。
*事前にお申し込み下さい。

●英語特講
6/13(月)18:40〜20:00
対象:中学・高校生
場所:山の学校教室
担当:山下太郎、山下あや
*それぞれの生徒に応じた問題を用意し、時間内でひたすら問題を解き続けてもらいます。それぞれの答案の採点をその場でしながらコメントしていきます。
*事前にお申し込み下さい。

●ひねもす道場(小学3〜6年)
6/17(金)16:00〜18:00
対象:小学3〜6年生
場所:山の学校教室
担当:福西亮馬
定員:10名
※ひねもすとは、紙を丸めて作った大小2種類のパイプを繋げて作る工作です。部材そのものから自分で完成させる楽しみを味わうことが出来ます。
※低学年(1~2年)の部、中・高学年(3~6年)の部を、それぞれ隔月で開催しております。事前にお申し込み下さい。

将棋道場定員に達し、受付終了となりました。
6/20(月)16:00〜18:00
対象:小学生
場所:山の学校教室
担当:中谷勇哉
定員:先着20名
*フリーの対局スペースを設けております。初心者・経験者問わず、ふるってのご参加をお待ちしております。初心者の方も安心してご参加下さい。
*事前にお申し込み下さい。

●何でも勉強相談会
6/27(月)18:30〜21:30
対象:中学・高校生
場所:山の学校教室
担当:浅野直樹・山下あや
*講師が勉強や進路の相談などを幅広く受け付けます。保護者との面談も致します。事前にお申し込み下さい。
※【お詫びと訂正】イベントチラシ内、 google カレンダー内で、「何でも勉強相談会」の日程が「6/29」となっておりました。正しくは27日(月)です。訂正とお詫びを申し上げます。

 

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「中学数学」「中学英語」受講生より

受講生から頂いた感想文をご紹介致します。

「中学数学」「中学英語」

 数学と英語に苦手意識があったので受講しました。

数学の授業では、学校の進度にあわせて用意してもらったプリントを解きました。分からない問題は丁寧に教えてもらい、なぜそうなるのか、などといった計算の過程も一緒に考えながら解説してくださったので、よく理解することができました。

英語の授業では、基礎英語を中心に勉強しました。最初のころは音読や、英語を日本語に訳して読むことが上手にできなかったのですが、回数を重ねるごとにスムーズに読むことができるようになりましたテスト前には学校の教科書にあわせたプリントを作ってくださり、重点的に勉強することができました。語句や文法の疑問があったときも分かりやすく教えてくださいました。

どちらの教科もテスト対策、受験対策をしていただき、それぞれの対策を十分にすることができました。毎週学ぶ事が多くあり、力をつけることができたと思います。授業を通して、学ぶことが楽しいと思うようになりました。山の学校のクラスを受講して良かったです。(R.Kさん/中学3年 受講期間:2014年度春学期〜2016年3月)

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ラテン語講習会のクラスだより

ラテン語講習会のクラスだより

4年前、「東京に山の学校があればありがたい」というお声をきっかけにラテン語の出張講習会を始めました。予想を超えるお申し込みと受講生の熱気に押される形で、以来月に一度の割合で東京と京都で講習会を行なっています。京都で開くのは、毎週山の学校に通えない方のニーズに応えるためです。

参加者は山の学校と同じく学生、主婦、会社員、教員、退職したシニアなど様々です。「すべての道はラテン語に通ず」と言いたくなるほど、動機こそ違えどもラテン語に対する熱い思いを共有する点でみな同じです。

当初は文法のクラスだけでしたが、今は文法を終えた人のための講読クラスもご用意し、キケローの「スキーピオーの夢」と「アルキアース弁護」を読んでいます。それぞれ1回3時間の授業ですが、文法クラスは6回(合計18時間)で全体の鳥瞰図が得られるように工夫し、文法を一通り終えたら講読クラスで原典講読に挑戦するという流れになっています。

文法のクラスでは自著『しっかり学ぶ初級ラテン語』を教科書に使っています。解答に至るまでの考え方を丁寧に説明しているので一人でも十分学べる内容になっていますが、例文も練習問題も古典作品からの引用が多く含まれるため、しっかり読み込んでいくと訳語の選択に迷う場合も多々出てきます。講習会では、そうした疑問にもお答えするよう心がけ、適宜オリジナルの文脈の解説にも踏み込んでいます。

講読コースの参加者には、事前に原典の一字一句について詳しい語釈を施したオリジナル資料をお渡しし、予習に役立てていただいています。この資料では、et(そして)一つに至るまで個々の単語の意味と文中の役割を詳述してあるので、この資料があれば一人でもキケローの読解に挑戦できる内容になっています。ただしラテン語の常、別解はいくらでもありますので、クラスでは資料に書いた説明と異なる解釈も検討しながら、1度に2節のペースでじっくりと読み進めています。(山下太郎)

>>詳細はこちら

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「高校英語」受講生より

受講生から頂いた感想をご紹介致します。

「高校英語」

レベルに合わせて、授業をしてもらい、苦手だった英語を無理なく勉強できました。テスト前には自分の学校のテストの傾向に合わせて、対策をしてもらって、よい復習ができました。

受験前には、対策はもちろんのこと、いろいろなアドバイスをもらい、不安な気持ちを解消でき、とてもありがたかったです。

(F.Hさん/高校3年生 受講期間:2013年度秋学期〜2016年3月)

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素読と子どもたち

『山びこ通信』2015年度冬学期号より、巻頭文をご紹介致します。

素読と子どもたち

山の学校代表 山下太郎

 私は山の学校で「論語」の素読を担当しています(月に一回、小学生対象)。やり方は幼稚園で行なっている俳句と同じです(週に二回、年長児対象)。どちらも正座をして挨拶し、黙想するところから始まります。俳句は五、七、五の切れ目まで、一方、「論語」は切りのよいところまで私が先に言葉を発し、子どもたちがそれを復唱します。
「論語」の素読は今も草の根レベルで行われていると思われますが、幼児を対象とした俳句の素読はおそらく全国的にもまれだと思います。これは幼稚園の創設当初に祖父の発案で始まったものです。「幼児と俳句」と題したエッセイ(『この道50年』所収)の中で、父が祖父の心中を次のように伝えています。
「俳句なら短かくて覚えやすいし、文学的なリズム感もある。就学前の準備教育とは違い、早くから知っていたからといって入学後の学習の妨げにもなるまい。幼児期にこそ、日本古来の最短詩である俳句を通して、知育よりもむしろ詩ごころの根っこを育ててやりたい」。
昔と今と、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しましたが、今の子どもたちが、俳句や「論語」といった伝統に根ざした「大人の言葉」、「本物の言葉」を渇望していることは実践して初めてわかります。素読とまでいかなくても、家族で百人一首をすれば、読み手となる大人は誰もがこのことを実感するのではないでしょうか。
さて、山の学校の「論語」では、私は本来の素読を離れ、子どもたちにいろいろな問いを出すようにしています。例えば、「徳孤ならず。必ず隣あり」を紹介した後、「この『とく』とはどんな漢字かな?」といった具合に。下の学年から尋ねていくと、ある生徒は「得」、別の生徒は「特」と答え、最後に上級生が「道徳の徳」と答えてくれます。
知識の確認をするためというよりも、こうしたやりとりそのものを大事にしたいと思い、私はできるだけ子どもたちにとって身近な話題を取り上げ、対話(問いと答え)の時間をもつようにしています。「論語」にかぎらず中国古典の魅力は、一字一句、一文一文が多様な解釈を許容する点にあります。すでに知っていると思っている言葉も、観点を変えて問い直すと面白い発見があります。
子どもたちの反応を見ていると、ある程度わかりやすい言葉とそうでない言葉があります。「利によりて行えば怨(うら)み多し」や「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」などは、内容を説明すると低学年の子どもたちも「なるほど」という顔をします。逆に「君子は器(き)ならず」は、「器」でいけない理由を子どもに伝えるのは難しく、また、「巧言令色すくなし仁」も、説明に手こずる言葉です。もちろん、素読ということでいえば、言葉を尽くして理解してもらうことが目的ではありません。
昨年の某日。この日は許可を得て幼稚園の年長児が参加していたこともあり、基本に戻って冒頭の言葉のみを扱うことにしました。

子曰く(しのたまわく)、学びてしこうして時に之(これ)を習う、また説(よろこ)ばしからずや。朋(とも) 遠方より来たる有り、また楽しからずや。人知らずして慍(うら)みず、また君子ならずや。

慣れ親しんだこの言葉を全員で朗誦した後、私は子どもたちに次のような話をしました。
「復習することは楽しいですか。家に帰って学校で学んだ事を復習するのは大事です。コツをいいます。六年生は五年生、五年生は四年生の勉強に必ずうっかりしていること、積み残しがあります。二年生は一年生で習ったことをやり直すと『なるほど、そういうことだったのか』とわかることがあるはずです。その発見は『よろこばしからずや』です。では尋ねます。一年生は何を復習すればいいのでしょうか」。
こう聞くと、みな困った顔をしました。一人の小学一年生が答えました。「幼稚園には教科書はない」と。お見事。その通りです。次に、二年生が答えました。「一年生でもすでに習ったものがある。それをやり直せばいい」。これもその通りです。私は次のように話を続けました。
「今日集まったみなさんは幼稚園時代に何を学びましたか。俳句の時間に園長先生が言ったことを思い出して下さい。『姿勢が大切。小学校に行ってもよい姿勢で学んで下さい』と繰り返し言いましたね。そのことはどうしても忘れがちです。ほかにもたくさんのことを幼稚園時代には学びました。今できていることもあれば、できていないことや忘れてしまったことがあるかもしれません。そのようなことをもう一度思い出してみて下さい。そして『なるほど、そういうことか』と納得できるなら、それもまた『よろこばしからずや』です。
孔子は学校の勉強を学ぶことだけを『学ぶ』と言ったのではありません。むしろ、幼稚園時代にみなが大切にした優しさや思いやりや勇気の一つ一つを大人にもわかるように説明していると先生は思います。たとえば、みなさんは、手をつないで幼稚園に通いました。年少児が泣いたとき、『だいじょうぶ?』とやさしくしてくれました。そんなみなさんを孔子は『君子なるかな』と言うでしょう。君子とは立派な人という意味です。大人だけが立派だという意味ではありません。今いるみなさんも、良い姿勢で学び、家族や友達を大切にして毎日を過ごせば、君子と呼ばれるのです。この『論語』という本にはそういう生きる上で大切なことを『思い出す』ヒントがいっぱい書かれています。そしてその大切なことは、幼稚園ですべてみなさんは学んだのです。これからも、がんばって声に出していきましょう」。
冒頭の言葉はこれまで何度説明したか、何度声に出したかわかりません。子どもたちの真剣な姿勢と表情が、この日は上のような話を導いたと感じています。私にとっても、素読の時間は新鮮な言葉との出会いの場になっています。 (山下太郎)

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5月イベントのご案内

2016年5月のイベントをご案内致します。会員に限らずどなたもご参加頂けます(いずれも無料です。)。
定員がございますので必ずお申し込み下さい(※)。
※事前にお申し込みの無い方、また、対象外のお子様は、当日お越しになってもご参加頂けません。
event2016-5

●英語特講
5/16(月)18:40〜20:00
対象:中学・高校生
場所:山の学校教室
担当:山下太郎、山下あや
*それぞれの生徒に応じた問題を用意し、時間内でひたすら問題を解き続けてもらいます。それぞれの答案の採点をその場でしながらコメントしていきます。
*事前にお申し込み下さい。

論語の素読・勉強会(※)(受付終了。)
5
/21(土)8:30〜11:00
(※お申し込み時の注意:「素読のみ
の参加か、「素読・勉強会両方の参加かをご明示下さい。
対象:小学生
場所:山の学校教室
担当:(素読 8:30〜8:45)山下太郎、
(勉強会 9:00〜11:00)山下あや
定員:先着15名

*素読では、毎回論語の一節を紹介し、参加者皆で声を出して読みます。
*勉強会では、各自が課題を持ち寄り、講師が監督する中、異なる学年間で教えたり、教わったりしながら、自発的に学び合う時を過ごします。
*事前にお申し込み下さい。

将棋道場(受付終了。)
5/23(月)16:00〜18:00
対象:小学生(中学生も歓迎!)
場所:山の学校教室
担当:中谷勇哉
定員:先着20名
*フリーの対局スペースを設けております。初心者・経験者問わず、ふるってのご参加をお待ちしております。初心者の方も安心してご参加下さい。
*事前にお申し込み下さい。

●何でも勉強相談会
5/23(月)18:30〜21:30
対象:中学・高校生
場所:山の学校教室
担当:浅野直樹・山下あや
*講師が勉強や進路の相談などを幅広く受け付けます。保護者との面談も致します。事前にお申し込み下さい。

ひねもす道場(1〜2年)(受付終了。)
5/25(水)16:00〜18:00
対象:小学1〜2年生
場所:プレイルーム
担当:梁川健哲
定員:10名
※ひねもすとは、紙を丸めて作った大小2種類のパイプを繋げて作る工作です。部材そのものから自分で完成させる楽しみを味わうことが出来ます。
※低学年(1~2年)の部、中・高学年(3~6年)の部を、それぞれ隔月で開催しております。

 

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