『モモ』を読む(西洋の児童文学を読むB、2021/4/23)(その3)

福西です。

(その2)の続きです。

モモの変化について、受講生のK君が、次のようにコメントしました。

16章の最後で、「それならきょうのま夜中に会って話をしよう」と、灰色の男たちは会合の時間を指定した。けれども場所を指定しなかった。それは、灰色の男たちにとって致命的なミスだった。

もし「円形劇場」など場所が指定されていたら、そこに行ったモモは、灰色の男たちの言いなりになったと想定される。しかしそうしなかったことで、モモは町をうろつくことになる。

それが猶予となった。モモが「みんなを助けるために、自分ががんばらないといけない」と思い立ち、灰色の男に立ち向かう勇気を持つ。これによって、灰色の男たちは滅亡することになる。

作品の前半では、モモは、人の話を聞くことで、彼らが「こうしよう」という自分の意思を持つことを手伝う、いわば触媒的な存在だった。

物語の後半では、モモ自身が「こうしよう」という「自分の意思」を持って行動する。それがみんなの時間を救い、灰色の男たちを破滅させることとなった。

この作品には、「モモの意思」の大きな転換があります。

それが、ぼくの気付いたことです。

作品を構造的にとらえたK君の上のコメントは、貴重です。

K君、ありがとうございます。私も勉強になりました。