「クローディアの秘密」を読む(西洋の児童文学を読むA、2021/10/21)

福西です。

小学生クラスの方です。

9章「クローディアの秘密」の続きです。

夫人は、クローディアをいくつかの固定観念から解き放ってくれます。

この章の夫人の言葉は、作者カニグズバーグのそれが乗り移ったものでしょう。それが教訓めいて、読者の心を素通りしないのは、夫人の一貫した態度にあると思われます。

つまり、夫人は、最初から最後まで、二人の子供の珍客に対して「人間」であり、そして二人を「人間」として遇しています。大人と子供というヴェールを取り払って、人間と人間で腹を割って話しているのです。

だから対等な相手であればこそ、何の容赦もありません。

夫人はそもそも、本物との会話にしか興味を示さないのです。そこにブレはありません。

つまり、クローディアたちが本物である限り、夫人とはいつまでも話ができるのです。

それがこの本を読んでいて、快い要素です。

夫人は過去を多く持ち、クローディアたちは未来を多く持っています。

しかし、過去と未来は、永遠から見て、等価です。

天使像の秘密は、その「永遠点」です。

クローディアたちと夫人がお互いの持っている秘密は、永遠の意味において交換可能なのです。

夫人の好奇心は、クローディアたちが美術館にいた出来事に揺さぶられます。

そして天使像と「同等の興味」を抱きます。

美術館での出来事をすっかり話すこと。

それを条件として、二人は、夫人のファイルを「一時間だけ調べること」を許されます。

 

そしてついに、天使像がミケランジェロの作である証拠、一枚のスケッチを見つけます。

クローディアは、スケッチを抱きしめます。「天使像を抱きしめる」という念願がかなったのでした。

かわりにジェイミーが夫人に質問します。おばさんは何を一番したいかと。

夫人は、「あなたたちのお母さんのように、うんとあなたたちを心配してみたい」と答えるのでした。

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