『イタリア語講読』(クラス便り2015年6月)

「山びこ通信(2015年度春学期号)」より、下記の記事を転載致します。

『イタリア語講読』

担当 柱本 元彦

 

 相変わらず三名の読書会という感じで進めています。冬学期に予定通りダンテの『新生』を読了し、春学期は何にしようかと散々悩みましたが、ダンテの次はやはり、というわけでペトラルカの『カンツォニエーレ』を選択しました。イタリア文学を代表するこの対照的な二人の詩人を精読することは、確かに貴重な経験ではないかと思います。とはいえなかなか簡単ではありません。一回の授業でソネットを三つか四つのペースです。『カンツォニエーレ』は三六六篇の詩を収め(序および一日に一篇で一年分)、大半が十四行詩のソネットですが長い詩もあります。全編が恋人ラウラに捧げられています。けれども初めての出会いから二十年後に彼女は亡くなり、二六七番からの『カンツォニエーレ』後半は、ラウラの死後に詠われた詩です。ともかくさすがに詩ばかりを読みつづけるのは大変ですので、今回、『カンツォニエーレ』はごく一部だけを読むことにしました。音楽が付けられた詩にしようと思って調べますと、もっとあるだろうと期待していたモンテヴェルディのマドリガルには四曲しかありません。ラッスス作曲のソネットが十曲、パレストリーナ作曲の三六六番が見つかりました。けれども一番の発見は、フランドルからやってきてヴェネツィア楽派の祖となったヴィラールトでした(モンテヴェルディの一世紀前の人物です)。彼はカンツォニエーレから二五篇のソネットに曲をつけています。たしかにポリフォニーの音楽から言葉を聞き取るのは簡単ではありませんが、素晴らしくきれいな曲です。ヴィラールトを聞いたのは初めてでしたから、これは今期の大きな収穫でした。