「山びこ通信(2014年春学期号)」より、クラス便りを転載致します。

『山の学校ゼミ(社会)』 担当 中島 啓勝

前学期の途中から生徒数が三名から四名になったこの授業ですが、特に何の支障もなく最初からこのメンバーで集まっていたかのようなアットホームな感覚で、今年度も楽しく勉強させて頂いております。むしろ参加者が増えたことによって、より活発なディスカッションができるようになり、喜ばしい限りです。

開講当初からこの授業は、グローバルな政治・経済・社会関連のニュースを取り上げて解説する時間と、課題図書を指定して講読する時間の二本立てで行っています。今年は当初、「フラジャイル・ファイブ」と呼ばれる通貨の脆弱性が懸念される新興五カ国のいくつかで大きな選挙が行われるという話題が大きな注目を集めてきました。しかし実際に蓋を開けてみると、ウクライナ情勢の緊迫化やEU議会選における反EU勢力の躍進、タイでの軍事クーデターなど、それ以外の国や地域でも様々な問題が噴出しており、ここ日本に関しても、アメリカとのTPP交渉が想像以上に難航するなど、高見の見物では済まされない状況となっています。世界情勢というものは元々そういうものだと言えばそれまでなのでしょうが、いくら何でも近年の混迷ぶりはかなり新しい事態なのではないでしょうか。

ところで、日本の新聞やテレビのニュースを普段ぼんやり眺めているだけだと、どうして日本と地理的距離や関係性の近い中国や韓国の話題ばかりが目に飛び込んできます。それも、いわゆる「紋切り型」の論調が目立ちます。そうした意見が必ずしも間違っているという訳ではありません。ただ、一つのニュースを見る場合であっても、様々な角度から事象を捉えて検証する意識は大事だと思うのです。そのため、授業でニュース解説をする時には、「わかりやすい図式」ももちろん提示しつつ、「ややこしくする視点」もできるだけおり交ぜていくように心がけています。

例えば、あるニュースに関して生徒のお一人が「これは簡単にいうと民族対立が原因なんですよね」と質問されて、しかも実際にその通りだということがあるとします。その場合は、皆さんでその国の民族問題について詳しく学んだ上で、民族対立という図式に容易に隠されてしまう他の要因、経済格差の問題やもしくはその国固有の歴史的文脈などにも多く触れるよう注意を払っています。つまり、「簡単にいうと」を逆なでする努力をしているのです。

この授業は「大人の社会科」を目指していますが、それは扱う内容についてだけではなく、学び方もまた大人であることを目指しているということです。学びの中で、敢えて迷う。敢えてわからなくなる。知識も経験もある成熟した方々が、問題意識はきちんと持ちながら、答えを急がずに広大な知の庭園を逍遥する。ぶらぶらと連れだって歩きながら、ああでもない、こうでもないと話し合う。そんなイメージを大切にして、今後も皆さんと豊かな時間を共有させて頂こうと思っています。

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