『山びこ通信』2004年7月号のより、各記事をご紹介します。(以下転載)

『数の基本』(中学)/『数と自然』(高校一般) (担当:下村昭彦)

x=(√5+1)/2

これは、二次方程式x-x-1=0 の解のうちの一つです。高校1年生で習う解の公式さえ知っていれば、誰でも解ける問題です。では、この数字の意味するモノは?

数学とは、数や式の意味を追求する学問です。この数字が何を意味するのか、この数式は何を意味するのか。そして、物事を数式で表すことでより理解を深めようとする学問です。

お見せした数には二つの意味があります。その一つは、フィボナッチ数列(1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, …と続く数列)のある項とその前の項の比の極限です。そして二つ目の意味は黄金比です。

今の学校教育では、残念ながらこの二次方程式の解き方を習う際に、この式が何を意味しているのか、ということを習うことはありません。しかし、フィボナッチ数列について考えるとき、黄金比について考えるとき、この方程式が解けなければその数の意味に辿り着くことができません。計算練習ほど面白くないことはありませんが、計算力ほど数学について考える上で重要なこともありません。いくら面白いアイデアが生まれても、計算力がなければその考えを発展させることができないからです。

数学のクラスでは、数学のおもしろさや数式の意味を知ってもらうこと、そして自ら数学を学びたいと感じてもらうこと、を最終目標としています。

中学校2年のクラスでは、主に中学1年生の復習と授業の先取りをメインに行っています。中学の数学では文章題もさることながら、計算問題の練習が特に重要です。数学においては理解し、式を立てることこそがもっとも重要ですが、計算し解答まで導かなければ理解を活かすことができません。にもかかわらず、計算問題はおろそかになってしまいがちです。そこで、このクラスでは計算問題にも力点を置き、文章題などの発展問題に進んだときにも計算でつまづいて数学を面白くないと感じることのないよう注意しています。また、わからないところがあれば理解できるまでとことんつきあっています。数学嫌いを防ぐには、数学を面白いと思ってもらうことこそが最も重要です。生徒に数学を面白いと思ってもらえるよう、工夫を重ねていきたいと考えています。

高校生のクラスでは、学校の範囲を超えてより発展的な内容に触れることを心がけています。現在の入試制度のもとでは、残念ながら教科書だけでは入試問題に対応することができません。ですが、入試問題は現実的な社会的・工学的・理学的問題と密接に関わっていることが多いのです。数学的な問題が実際に生活の中で活かされていることを知ってもらえれば、数学を好きになってもらえるはずです。また、思考ゲームとしての数学のおもしろさ、すなわち論理的思考法を習得してもらうことも目指しています。論理的思考は、文科系・理科系問わず、問題解決の際に必ず必要となる能力です。数学を通して、順序立てて物事を考える技術を身につけてもらいたいと考えています。

いつか、子どもたちが無限の地平にたどり着けるように。

(下村昭彦)

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