ひきつづき、『韓非子』姦劫弑臣篇を読んでいます。

はじめに、前回 解釈し残していた箇所を検討しました。

「固」について。『漢辞海』は「固」の説明として「もちろん。《後に全文をくつがえす表現をともなう》」としていますが、思い切って「句法」欄に入れてくれてもいいような気がします。ちょっと真似をしてみれば…

[句法] 譲歩を表す重文の前節に置き、ある事実や条件を示す。ふつう後節に接続詞「然」「而」や副詞「亦」などを呼応させる。

「固A、而B(もとヨリAナルモ、しかレドモBナリ)」と訓読し、「もちろんAなのだが、しかしながらBだ」などと訳す。

[例] 愚者固欲治、而悪其所以治。(ぐしゃもとヨリちヲほっスルモ、しかレドモそノおさムルゆえんヲにくム) [訳] 愚者は(国が)よく治まることを望んでいるくせに、治めるための手段(=法律・刑罰)は嫌っている。〈韓・姦劫弑臣〉

「必」について。今回よんだ箇所に、「其誅重而必(そノちゅうおもクシテひつナリ)」とあって、この字のが検討の対象になりました。ふつうは副詞として使うことが多いのですが、動詞になることもあります。『漢辞海』は「決行する。必ず実行する。[例]刑重而必(けいおもクシテひっス)」と『韓非子』定法篇の用例を引いて動詞としていますが、「訳」は「刑罰は厳しくして決行する」としてあって、意味がいまひとつ不明瞭です。

この「必」は品詞としては形容詞(形容動詞を含む)と考えるのがいいと思いますが、これにピタリと当てはまる日本語が思い付きません。(私の語彙力が足りないだけかも知れませんが、)「必ス」と動詞として読むのは、そのための方便、知恵なのだと思います。「例外がない。間違いがない」ということですが、子どもが約束したあとに「ぜったいだぞ!」と言うときの、あの「ぜったい-だ」がニュアンスとしては近いような気がします。

木村

Share