山びこ通信(2013年度・冬学期号)に寄稿されたエッセイを転載いたします。

 

『山の学校10周年によせて』 前川 裕

山の学校が10年続いてきたことに、まずは驚きと喜びを申し上げます。それだけの長い間、学びを求めて長い坂を上り続けた方々がいらっしゃったからこそ、これだけ続いたのでしょう。その意味で、まず受講していただいた方々、またこの事業をご理解いただき、子どもたちを送り出していただいた保護者の方々に感謝を申し上げます。

山の学校の特色は、幅広い年齢層に対して本格的な教育を行っていることでしょう。世にカルチャーセンターはたくさんあります。楽しみのための学びの場は、もっと容易に見つかるでしょう。山の学校は、そもそも左京区の山の上にあります。そこまで到達するには時間も距離もあり、そして最後には自分の足で山を上らねばなりません。それは知というものに求められる姿勢を表しています。知は身近とは限らず、時には遠くまで探しにいかねばなりません。そしてさまざまな教材があり教師がいるにせよ、最後には自分の力で学ばねばなりません。山の学校は、まさに「体で」学びの意味を感じ取る場なのです。

私は、山下太郎先生の招きにより山の学校の初期から携わらせていただきました。ラテン語の文法および講読、また古文講読を担当しました。受講者は大学生から歳を重ねた方々まで、さまざまな方がいらっしゃいます。しかし知を求める姿勢はみな変わりません。皆さんの学びへの熱意に講師もまた学ばされる場、それが山の学校です。その意味で、山の学校は講師と受講生とがともにつくりあげていく場であるといえるでしょう。

私事ですが、この春にて大学に働きの場を移すため、山の学校の講師はいったん終了させていただきます。しかし、またいつでも戻ってきたいところ―それが山の学校です。この希有な学びの場が続いていくことを祈念申し上げます。

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