岸本です。

今日は、まずことわざを用いた問題を解いた後、いつものように『人間失格』を読み進めました。

ことわざを用いた問題とは、実際の文章に使われたことわざを、前後の文脈から判断するものです。
今回は、比較的よく知られた「雨降って地固まる」や「九死に一生を得る」などだったため、割とよくできていました。
これによって、前後の文脈を読み取る力もつけていきましょう。

さて、『人間失格』は、第三の手記の後半に入ってきました。
世間への恐れがすこし和らぎ、またクロウの詩に影響を受けて同じような日常を繰り返す「蟾蜍」になることを嫌った葉蔵は、年下のヨシ子と結婚(内縁関係)という「一本勝負」に出たのでした。
当初は幸せそうに見えた二人でしたが、堀木との「旧交」を温め始めた頃から、また酒におぼれ、質屋に通うようにもなりました。
ある夜、葉蔵は堀木と自宅で飲みながら、悲劇名詞・喜劇名詞の当てっこや、対義語(アントニム)・同義語(シノニム)の当てっこをしていました。
ここは、葉蔵の気持ちを知るのにかなり有用な場面ですが、今回は特に「罪のアントは何か」という点に注目しました。
それは「法律」や「神」だとして、深い考えもなしに答える堀木は非常に能天気でしたが、葉蔵はまじめに思い悩むという対照的な場面でした。
これは、自分は罪と関係ないとする堀木とは違い、自らと「罪」を重ねる葉蔵にとって、対義語を通して「罪」、すなわち自分の正体を見出そうとしていたからです。
生徒さんにも、堀木の意見や自分なりの「罪」の対義語を考えてもらいながら、葉蔵の気持ちを追っていきました。
ここで出てきたドストエフスキーの『罪と罰』もいつか読んでもらいたい本ですね。

さて、そのとき目撃してしまった妻ヨシ子の姦通は、葉蔵の人生にとって決定的な出来事になります。
人を疑うことを知らない「信頼」の天才ヨシ子は、彼にとって聖なるものでしたが、その信頼ゆえに姦通するという「罪」につながってしまったと考えた葉蔵は「信頼は罪なりや」と自問自答を繰り返すようなり、夫婦関係もぎくしゃくしたものになるのです。
「世間」という「個人」への恐怖心が和らいだところで、崇敬していた「個人」の裏切りにあった葉蔵にとって、その衝撃は想像を絶するものだったでしょう。
これまでの要点を振り返りながら、生徒さんにはそのショックの度合いを理解してもらいました。
このショックを受けた葉蔵がどうなってしまうのか、来週はその後の顛末を読んでいきます。

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