10/1 中学ことば

高木です。

「ことばのスケッチ(絵画)」の清書が完成しました。
今日の記事では、三人の生徒さんの作品(と私の講評)をご紹介します。

H君:

海の中に水面から、三メートルぐらい潜っている。
百五十センチぐらいの男の子は、白いヘルメットのような物をかぶっている。
それは縱三十センチメートルぐらいあり、横は三十五センチメートルぐらいある。
それは球である。だが肩に載せているだけだ。
それの正面は透明である。少し横から見ると立体的になっている。
ヘルメットの上側の少し後ろにはホースがある。透明である。
そのホースから、地上からの空気がでてきている。
ヘルメットから外に、その男の子が吐いた空気がでている。すごく小さいあわででている。
ヘルメットの中に少しの水が中に入っている。
その男の子の頭の上には、ヘルメットをとってもらうための、
縦十五センチメートル、横三センチメートルぐらいのとってがついてある。

手は綿の赤い手袋を着けている。
くつは二十五センチメートルぐらいで色は青である。
服はナイロンでできている水着である。色は黒である。
ズボンはふとももぐらいまである。少しピンクぽい色があり、大部分は黒である。
大人の男性も同じのをかぶっている。
ズボンは違う。銀色のような色をしている。
二人は魚肉ソーセージを持っている。
魚が体を包んでいるぐらいいっぱいいる。

三種類の魚がいる。(一種類目は)少しはなれたところにいる。
色はオレンジで一部は白色であり周りは黒色である。
つぶつぶの集まりでできている。
そこにはイソギンチャクがあり、縱十五センチメートルぐらいですごく細いのがいっぱいある。
そこには十匹ぐらいいて他の魚は、いない。
二種類目は、黒の線が四本〜五本あり、大部分は白色である。
形はラグビーボールのような、形をしていて、しっぽは二本ある。目は黒だ。
三種類目は、頭のところは、とんがっていて、そこからななめになっている。
青い小さな魚だ。百匹ぐらいいる。
地面には岩があり、でこぼこしているところがおおい。
下を見てあるかないとけないくらいだ。
苔もついているところがところどころある。
男の子は、手すりを持って歩いている。

                     ☆

短い文章を積み重ねることで、分かりやすく、かつ「絵」が目に浮かぶような記述です。
互評の際にK君が言ってくれたように、
まず中心となる人物を丹念に描きあげ、それから背景を細かに描写していくという構成は、
非常にすっきりとまとまっていると思います。
全体として、描写力と観察力が高いと感心しました。ヘルメットだけでこんなに書けるのはすごい!
ところどころに、文中の言葉の重複がみられ、
また、「男の子の吐いた空気がでている」「手すりを持って歩いている」など、
少しだけ「絵」が動いてしまっているのが惜しいですが、
こうした物を見る目を、これからも文章を書く際に活かしていってほしいと思います。

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K君:

ぼくは、夏休み中で八月三十日土曜日に、
近衛中学校対旭丘中学校との練習試合に参加した。

ぼくは、緊張していた。
なぜなら、初めて試合にださせてもらえるかもしれなかったからだ。
そして、近衛から旭丘までは、プロ野球選手が投げたボールのように行くのが早かった。

そして、学校につくと、「(本人の名前)」と呼ばれた。
どきっとして、ふりむくと、「おまえ、ピッチャーやれ」と、監とくに言われた。
あまりにも突然すぎて、飛び上ってしまった。
それから、ぼくの心臓はだんだん速くなっていった。
ブルペンではふつうにストライクがはいっていた。
しかし、初めてのマウンドに上がると、緊張感がMAXにたっした。

そして、「プレイボール」としんぱんが言ったと同時に、
ボールをおもいっきり投げた。
すると、調子は悪くなかったが、緊張していて、
なかなかストライクがはいらなかった。
すると歓声が聞こえてきた。
ベンチのみんなや、守ってくれている人の声だった。
そこから、緊張しなくなって、相手の長い長い攻撃が終った。
その時すでに、つかれていて、かなりへとへとだった。
そして三番バッターで打順がまわってきたが、
サードゴロでアウトになった。

二回表の相手の攻撃が始まった。
けれど、かなり調子が出てきて、
一番バッターを「Vスライダー」で三振にとり、
二番バッターも三振にとった。
けれど、またヒットを打たれた。
しかし、そこからが安定していて、ピッチャーゴロに打ち取った。
この後の、近衛の攻撃や、三回、四回、なども、打線がつながらなかった。

試合には負けてしまったが、初マウンドにしては、内容は良かったと思う。

この試合の中で、一番印象に残ったのは、
「Vスライダー」で三振に取った場面が一番印象に残った。

こうして、ピッチャーとしての人生は、始まったばかりだ。

                     ☆

「写真」や「絵」のように、瞬間を切り取った物ではありませんが(私の伝達ミスです。すみません。)、
描写それ自体は細かく的確で、K君持ち前の文章のリズムの良さも相俟って、
互評のさいにH君が指摘してくれたように、
一コマ一コマが鮮明な、「映画(motion picture)」のような文章になりました。
そこで、アドバイスとしては、
このように「動く写真」にするならば、
どこかに「山場」をつくっても良かったかなと思いました。
たとえば「Vスライダー」で三振にとった場面を、
もう少し分厚く、スローモーションのように描写すると、
より全体の感動も高まるのではないでしょうか。

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A君:

身長百四十センチメートルぐらいの男性がいる。
その男性は、はかまやどうぎを着ている。
そのはかまやどうぎは深いあい色をしている。
またたれという五本の縦二十センチメートル、横十センチメートル前後でできている
厚さ一センチメートルぐらいの布でできているものを付けている。
たれはあい色でその中央にある一つの布には、
「(本人の苗字)」というように大きな文字で書いてある。
(本人の苗字)は他には面といわれる、布と鉄とひもでできているものをつけている。
顏のところは鉄が縱に一本、横に十本ぐらいある。
また布は肩のところにまで広がっている。
布のところはまたしてもあい色である。
また、鉄のあるところから二つひもが後ろの方に向かっている。そしてひももあい色である。
こてやどうといわれるものもつけていて、
こてはボクサーのグローブのようなもので、
どうは丸太を二分ノ一に分けて、樹皮だけにしたようなものに、
縱十、横二十センチメートルぐらいの布がついているような物で、
こてやどうはまたあい色である。
手には竹刀を持っている。
竹刀とは竹を四、五本ひもでまとめていて、つかやきっ先は白い布でおおわれている。
竹は少し肌色をしている。
竹刀の先は右下を向いていて、手は下にのばしている。
(本人の苗字)の前方一メートル六十センチメートルぐらいはなれたところに
一メートル七十センチメートルぐらいの身長の男性が立っている。
その男性も、はかまとどうぎを着ていて、
面、どう、こて、たれをつけていて竹刀を持っている。
だがその竹刀は少しブレている。
面にふれているのは竹刀の先の方だ。

二人が立っている場所の右おくにある窓からは光が差している。
その窓に下から一メートル六十センチメートル、上から約十センチメートル、
幅約二メートルの窓が二つ続けてあり、黒いカーテンがついている。
また窓をはさむかのように四十センチメートルぐらいつき出している柱が二本ある。
人がいる場所は地面に不規則にテープがはられている。
そしてマットが八枚ぐらい奥につまれている。マットは表面が白く、
縱が二メートル五十センチメートル、横は七十センチメートルぐらいの大きさだ。
それ以外には、飛びでた二本の柱のあいだには、
とび箱とせん風機が置いてあった。
とび箱は上の方が白い布でおおわれているが中央がやぶけており
中にはこれまた白い布が見える。そして木の部分は茶色だ。
せん風機は縱、横ともに一メートルぐらいで
ふつうのせん風機とはちがい鉄のあみで前をおおわれており、
その中には八枚ぐらいのプロペラが見える。
そしてコード以外は全て水色だ。
またコードはかべにくっついている。かべは全ての部分が茶色だ。
左奥のかべには下から六十センチメートル上から一メートル、
左右からそれぞれ三メートルぐらいはなれているところに黒板がある。
その黒板の色は黒緑、しかし下に銀色のチョークが置いてある台がある。
その黒板には何も書かれてはいない。
しかし何年も使われているのか少しきたなくなっていた。

また、はなれたところでは男性二人がやっていたものを
八人ぐらいが二人ずつ似たことをやっていた。

                     ☆

非常に緻密で、客観的な文章です。
互評の際にK君が指摘してくれたように、まさに「虫眼鏡で視る」ような文章ですね。
主観的感情を交えない淡々とした描写であるにもかかわらず、
その一つひとつのタッチがこれだけ重ねられると、
そこには紛れもなく、その切り取られた瞬間の緊張感や空間性がリアルに再現され、
圧倒的な迫力で伝わってきます。A君の文章からはそうした感慨が沸き上がります。
ここでさらに文章に磨きをかけるためのポイントを挙げるならば、語順への配慮を指摘できます。
たとえば「しかし下に銀色のチョークが置いてある台がある。」という文では、
「銀色の」と「チョークが置いてある」はともに「台」にかかるので、
短い文節を後に持ってきて、「チョークが置いてある銀色の台」とするのが良いでしょう。
(原文では、「銀色のチョーク?」と、読む流れが一瞬ひっかかってしまいます。)
また「下に」と「(チョークが置いてある銀色の)台が」はともに「ある」にかかるので、
これも短い方を後に持ってきて、最終的に「チョークが置いてある銀色の台が下にある」となります。
(これも「下にチョークが置いてある?」と、ひっかかりかねないので。)

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今回の「ことばのスケッチ(絵画)」で彼らは、
描写力が高められただけではなく、物や風景を視る(観察する)目も養われたことと思います。
この取り組みは、意識的に目的を限定した「特訓」でもありましたが、
ここで得たことは、今後文章を書いていく要所要所で役立っていくと、私は信じています。
是非いろいろな場面で活かして下さい!