西洋古典を読む(2022/9/14)(その2)

福西です。(その1)の続きです。

さて、10巻の冒頭では、天界で会議が開かれます。

ユピテルは「なぜトロイア人とイタリア人が戦争をしているのか」と神々に質問します。

ユピテルのヴィジョンは神らしく巨視的です。「戦争は(ポエニ戦争で)ローマとカルタゴが戦う時に、思う存分やればよい。それまでの戦争は予定にはないはずだが」というようなことを言います。その目は未来を向いています。これには4巻末のディードーのセリフ、「わが骨より誰か復讐者よ出でよ」を思い出します。

さて、ウェヌスとユーノーは、お互いのせいにするようなことを発言します。

ウェヌスは1巻でユピテルから「支配権(とセットの苦しみ)には終わりがない」という未来を教えてもらったにもかかわらず、1巻の時と同じように、「目の前の苦しみに終わりを与えてほしい」と願い出ます。「アエネーアスは死んでも仕方がない。アスカニウスを自分の領地に隠居させたい」というようなことまで言って、泣き落としにかかります。

それに対してユーノーは、「トロイア戦争の前、自分が美しさを侮辱されたこと(パリスの審判)が原因で、今の戦争の苦しみがある。原因に対する結果なのだから、今さらどうしようもない」というようなことを言います。ユーノーのヴィジョンは過去を向いています。これには1巻の冒頭「神々(ユーノー)の胸にこれほどの怒りが(あるのか)」を思い出します。

言い争う二人を説得するため、ユピテルが手短に、再び未来図を提示します。ですが、それはまた次回。