西洋古典を読む(2022/6/15)

福西です。

ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。

9巻の272-393行目を読みました。

伝令役を買って出たニーススとエウリュアルスに、アスカニウスが多大な報償を約束をします。

しかし読者は、その報償が裏腹となることを予想します。

エウリュアルスはアスカニウスに、万が一の時には、残された母の面倒を見てほしいと頼みます。

エウリュアルスは、言うと母が止めるだろうから、そうすると自分も辛くなるからだろうからと、母に言わずに任務についたのでした。

それがこの後、母の悲痛な叫び、「わたしを刺し貫け」(figite me、9.493)を生みます。

 

さて、二人は闇に乗じて、伝令として出発します。援軍を呼ぶために。

敵陣のすきを通り抜けねばならない際、二人は過剰な行動に出ます。

眠りこけているルトゥリー軍の陣屋を必要以上に荒らしまわったのです。

その努力は、当の本人たちにとってみれば「がむしゃら」であり、「不屈」であったでしょう。

一方、相手から見れば、あたかも野獣が人間の農地を荒らすかのような、不正(improbus)な行為だったでしょう。

土地勘にすぐれたウォルケンスの部隊が到着し、二人の行動に気付きます。

逃げる最中、ニーススはエウリュアルスがいないことに気付きます。そしてニーススは、せっかく逃げおおせた道を「すっかり」引き返します。

このくだりは、2巻のクレウーサを失ったアエネーアスの行動を思い出させます。

いつも思うことですが、これが2000年前に書かれた作品だなんて思えないぐらい、プロットが緻密です。『アエネーイス』は面白いですね。