『高校数学1 』クラス便り(2022.02)

山びこ通信2021年度号(2022年2月発行)より下記の記事を転載致します。

『高校数学1』

担当 入角晃太郎

 この講座は現在受講生は一人です。生徒さんが学校で使っている教材を一緒に解いています。生徒さん自身がよく疑問を持つタイプということもあり、この講座では、問題を解くなかで用いた定理について、それがなぜ成り立つのかの証明を生徒さんと一緒に考えてゆくことが多いです。

簡単な例を出すと、「二点間の距離の公式」は三平方の定理からすぐに導けます。この導き方を知っておくと、「二点間の距離の公式」が自然なものに思えてくるので、負担のかかる暗記に頼らずに済むのです。なお、三平方の定理は、「正方形が斜めに埋め込まれた正方形」の面積を二通りの求め方で求めることによって証明することができます。このように、ある定理Aの証明に別の定理Bが用いられていたときは、定理Bにも別個に証明を与えることができます。すべての定理は公理から導けることになっているからです。ただし、定理Bの証明に際しては、説明が循環してしまわないように注意する必要があります。定理Aを定理Bで証明したとき、定理Bの証明には定理Aを用いてはならないのです。「AなのはBだからだ」、「BなのはAだからだ」と言うことは、「AなのはAだからだ」と無根拠に言い張っていることに他ならないからです。

また、授業では、使った定理を証明するだけでなく、ある定理が既知の定理の拡張になっているときには、そのことも一緒に確認します。例えば、三平方の定理は、「θ=90°の場合の余弦定理」と見ることができます。更に余弦定理は、ベクトルで表現することもできます。このことを意識しておけば、仮に試験中に余弦定理をど忘れしてしまっても、その場で何とかできるはずです。

この講座では途中の説明や証明をなるべく省略せず、理詰めに数学に取り組んでいます。生徒さんがどんな疑問を持ってくるかはわからないので、私もその場で考えています。証明を思いついたときの喜びを共有できるので、毎回授業が楽しみです。