福西です。

新しいテキストは『海の王国』(ジョーン・エイキン、猪熊葉子訳、岩波書店)です。ロシアの民話をエイキンが脚色した短編集です。どんなお話が入っているのか、これから楽しみに読んでいきましょう。

この日は、表題作である「海の王国」を読みました。

ゾラ・ジェヴォイカという夜明けの乙女(太陽の神の娘)が登場します。

主人公は漁師のおかみさん。彼女は物語が上手で、漁師を喜ばせます。しかし、あるときから、漁師はおかみさんの物語に出てくるものを本当にあると信じこむようになります。そして、海の宮殿に連れて行けとおかみさんに命令します。

「いいか、明日の夜明けに、おまえは浜べに出て、海の王さまの宮殿にいく道を探すのだ。もしみつからなかったら、わざわざここへかえってくることはない。おまえなんぞに用はないからな。」

かわいそうなおかみさんは、赤ん坊を抱いて、海岸を探し回ります。疲れ果て、うとうとしたとき、赤ん坊が行方不明になってしまいます。海の何者かが連れ去ったのでした。

おかみさんの悲しみは、ひどいものでした。しかし漁師はそんなことお構いなしに、「もう待てない。自分で海の宮殿を見つけてくる」と言って、家を出て行きます。

そして漁師はゾラ・ジェヴォイカに嘆願します。するとその女神が現れ、道を教えてくれます。しかし一つ忠告します。「海の王国に入ったら、二度と家には帰れない」と。漁師はそれでも喜んで、海の王国に向かいます。しかし海の宮殿で、行方不明の赤ん坊を発見したとたん、赤ん坊を連れて家に帰りたくなります。しかし後の祭りです。

一方、いつまでも帰ってこない漁師を心配して、おかみさんもまた、ゾラ・ジェヴォイカに嘆願します。そして漁師のたどった道を通ります。いくつか試練があり、おかみさんは持ち前の親切心で、ことごとく切り抜けます。そして漁師と赤ん坊を発見します。

最後は、海の王国からの追っ手を逃れ、家族全員地上に戻るのですが、それをどうやって成し遂げたかは、ここでは伏せておきます。

ゾラ・ジェヴォイカの手助けに回数制限があり、それがハラハラさせる要因でした。

また、次のゾラ・ジェヴォイカのセリフに、胸のすくような思いがしました。

「あなたは助けてあげますよ。あなたは自分のつとめを忘れなかったから。」

そんな冒険があってからというもの、漁師はもう二度と海の宮殿に行きたいとは思わず、おかみさんと暮らす生活にいつまでも満足したということです。

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