『トムは真夜中の庭で』を読む(西洋の児童文学を読むB、2021/12/17)

福西です。

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)を読んでいます。

17「ハティをさがしもとめる」を読みました。

全章とあわせて、物語の山場の一つであり、物語の転換点です。

アベルはトムのひたむきさに心を打たれ、どうやら悪魔ではないと知って、トムを屋敷の中に通します。トムはさっそくハティを探します。しかしドアがたくさんあって、どこにいるのかが分かりません。

このとき、トムは仕事帰りのジェームズを見かけます。彼がすっかり大人になっていることに驚きます。

ちょうどジェームズが扉を開けるときに、うしろについて部屋の中に入ると、そこはおばさんの部屋でした。トムは、ジェームズとおばさんの会話を立ち聞きします。おばさんは、自分の子供だけしか愛さず、引き取ったハティに対して冷淡です。おばさんはこの時も、もしジェームズがハティと結婚する気でも、屋敷を任せるつもりはないと断言します。すると、ジェームズはハティには同情しているが、結婚する気はないことを伝えます。かわりに、ハティにもっと人付き合いをさせること、外の世界を教えることを提案します。おばさんは冷ややかに抗議します。

「あの子が、ひとりで庭園のなかにいたがるってことは、おまえだってよく知っているじゃないか(…)あの子は大きくなりたがらないんだよ」

屋敷に居場所のないハティは、庭園にそれを求めました。庭園は彼女のさびしさを癒しました。けれども今は、その庭園が彼女の大人になることを阻害しているのです。

子供時代の居場所を心の中に引っ越させ、思い出に変えること。それは、児童文学の永遠のテーマだと思います。

 

受講生の要約です。

H.Aさん

トムはハティが無事と知るが、やはり心配で邸宅の中へ足を運ぶ。初めてこの時代の邸宅を見たトムは、大時計に描かれた絵に興味を抱く。ハティを探すうちに、大人びたジェームズを目撃し、驚く。彼と彼の母のやりとりをきくうち、ハティの無事を再び確認する。

S.C君

トムはたくさんのドアの中からハティのいる部屋へのドアを探す。ハティのおばさんのドアをある男がノックした。その男は、前より大きなジェームズだった。ハティのおばさんは、ハティはよくない(ジェームズがハティに気があるとしても、ハティにはこの家を仕切らせない)と言った。