『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読む(西洋の児童文学を読むC、2022/2/3)

福西です。

『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)を読んでいます。

第2話「若ジェラード」を読了しました。

受講生の要約です。

第2話 若ジェラード

要約/Y.M.

若ジェラードとよばれている羊飼いがいる。若ジェラードというのは、羊の主人のジェラードじいと区別するためだった。だが、二人は親子ではなかった。一緒に住むことになったのは、ジェラードじいがまだ若かったときのこと──。

ある四月の夜、小屋にひとりの女がはいってきた。女は、サクラのつぎ穂と角灯を持っていた。その次に老婆がはいってきて、「宿が欲しい。」というと、女をベッドに寝かせた。ジェラードは、真夜中に戸の音で起きると、老婆が消えていた。ベッドを見にいくと、かの女は死んでいた。そこには、生まれたばかりの赤子が泣き声をあげていた。しかし、ジェラードは、大声で笑い、赤子を領主に売ることにした。そして、領主は、その子が21回目の誕生日がくるときジェラードは自由に、子どもは農奴になると約束した。

こうして若ジェラードは育ったが、サクラの木は花も葉もつけず、角灯は灯をともせない。二人のジェラードの間には愛情のかけらもない。若ジェラードは、陰気な夢を見ているように、じっと火や星を見つめたりして、明るさと暗さの「入りまじり」だった。特に、花が好きで、彼ほど丘のことを知る者はいない。そして、水が増し牧場が湖に沈むときに、渡ってゆける昔の道を発見した。このことは秘密にしていて幻を見ることも同じだった。

ある夕、若ジェラードは、子羊を見失ってしまう。なので、ジェラードじいのいない夜に探しに出る。すると、迷子の少女がいた。その子を、小屋に連れて行く。入り口のサクラの木は「いつか大きくなったら咲く」と説明する。若ジェラードがつんだ様々な植物など全て女王や王者の宝物だと少女は知っている。それから、二人は、歌ったり、踊ったりして楽しむ。若ジェラードが歌った歌は、不思議で少女には分からなかった。

そして、一緒にシダの葉や、モミの枝、カシワの葉を燃やす。肉体をもたない城のようになり、その骨と魂を見たと思うまに城はくずれ落ちる。小屋には友だちと住んでいて心の陽気な人だと少女に答える。少女の名はシアと呼ばれていて、クーム・アイビの殿の子だと知る。少女が眠ると、若ジェラードは、館まで見送る。そして、「いつかサクラの花が咲くから忘れずにまたきてほしい。」とささやいた。

年はすぎ、若ジェラードは十七になる。朝早く丘で、すらりとした少女に気づく。それは、シアだった。若ジェラードはシアに屋根までのびたサクラの他、彼が愛するものを見せる。二人は春が来るたび、楽しんだ。

こうして、ついに若ジェラードが21歳を迎えるときがきた。だが、シアは現れず、クーム・アイビで婚礼があると知り、呆然とする。ジェラードじいは、自由の身になれるところ、反抗する若ジェラードに対し、むち打つ。そんな、二人の前に老婆がいた。若ジェラードの亡き母を連れて来た老婆だった。老婆は、「働くのが生きることではない。」と言うと小屋に入っていった。二人は明日で縁切り状態になる。そのとき、丘から、婚礼から逃げてきた連中と会う。花むこは花よめに嫌われているという。そこには婚礼の二人もいた。一行は騒がしくなる。花よめ、シアは、サクラの花の雲を見る。しかし、若ジェラードに気づいた連中は、思いつくままに、シアとキスをさせる。若ジェラードは、「サクラが花をつけた。」とささやいた。

それを見た、花むこ、コーツの荒ら殿は、怒り狂う。また、同時にジェラードじいは、若ジェラードが死なぬ程度、杖で打ちまくる。若ジェラードがたおれると、荒ら殿一行はシアをとらえて、ワイルド・ブルックスへ行く。だが、その湖は満水で泳げるシア以外は溺れるだろうと若ジェラードは考えた。ジェラードじいは、最後の自由を買うためクーム・アイビへ行った。そこで、老婆が小屋から出てくる。老婆は、「若さの苦しみは、どれいのからだに、主人の心を宿すこと」と言う。それは、「愛を愛とさとらぬこと。」であった。

しばらくしてまた連中が戻ってきたが、溺れかけた様子だった。若ジェラードは、マントと角灯を持ってシアを探す。角灯の光に照らされたシアは子羊の様に泣いていた。小屋に帰るとたき火をする。二人は火にモミの実を投げ入れ、初めに出会った日のことを思い出す。それから、若ジェラードはサクラの枝を揺らし、サクラの星を降らせる。花は咲き、愛を愛とさとった。二人の気持ちは通じ合い、その夜二度目のキスをする。そして、ワイルド・ブルックスへ向かう。そこには、どんな災難が起こっても渡れる道があり、その先の美しい場所を目指して──。

老ジェラードが小屋に戻ったときには、二十年前と変わりなかった。領主につくり話だと言われた老ジェラードは、これからも農奴として使われるだろう。

 

(後日談)

昔、幾人かの領主がいた。そこでは、毎日が祭の様にサクラの木の下で子どもの心をもった者が歌って、おどった。この人たちの服には、サクラの葉と枝と実がついている。

昔、陽気なジプシーたちが住んでいた。また、角灯の作り手でもあった。

あるとき、ジプシー王のむすこと領主のむすめが恋をした。しかし、二人の恋は邪魔され、ひき離される。と、同時にサクラは枯れ、角灯の火は消えた。そのとき、ジプシー王の曾祖母が、不幸な恋人にサクラと角灯を持たせると、一緒に去っていった。それからの二十一年間はさびしさに包まれた。ジプシー王のむすこは溺れ死んでしまうが、花よめをつれた老婆は、川を渡り、赤子を産ませた。その赤子が若ジェラードであった。また、若ジェラードにとって老婆は、親せきだった。

消えた老婆は二十一年後、再び現れ、ジプシーと領主どちらにも、華やかな衣装をつけさせた。そして、みんなは歌い、おどりながら、来るべき人を迎えにサクラの木の下に出ていった。

読了おめでとうございます!