福西です。

 このクラスでは、隔週でユークリッド『原論』の中から、1つずつ命題を取り出して証明していきます。1回目はガイダンスを前半にし、そこから実は3回授業を使って、対頂角が等しいこと(『原論』1-15)を証明しました。

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(対頂角)

 4回目はディグレッションとして数学オリンピックの幾何問題を1問しました。
 5回目は「同位角が等しいこと」(『原論』1-29)を証明しました。錯角が等しいことから、ほとんど同時に「錯角が等しい」ことも証明できるので、それもすぐに確かめてもらいました。ここまで来て、ようやく本格的な味わいが出てきたと感じました。
 
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(同位角と錯角)

 今回は、その5回目の記録です。

 ユークリッド『原論』の構成と(ユークリッドによる)各命題の証明を、日本語でお知りになりたい方は、こちらのサイトが有力です。(「目次」を使って調べたい定義・命題に飛ぶのが便利です)。

『ユークリッド原論』

 さて、授業で配ったプリントでは以下のように表現しています。

『原論』1-29
ℓ、mが直線で平行ならば、それによってできる同位角は等しい。
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図において、等しいことを示すべき角は、aとbです。

K君がこの日はお休みだったので、以下、H君とA君の証明に限って掲載します。
原文はそのまま、( )内は私の補足です。

(H君の証明)
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A、Bは平行にする。A、ℓが交わったところにできる角は同じである。
A、mが交わった所にできる角度は同じである。

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赤(上側)の平行四辺形を見てください。平行四辺形は向かい角が等しいのでx=y=a。(図につけた色はコピーのため白黒です)

同様にピンク(下側)の平行四辺形ではx’=y’=b。

同様(に)緑の(一番外側の大きな)平行四辺形ではx=y’、x=a、y’=b だからa=b。
Q.E.D.

平行四辺形を3つ使った、「A=B、B=C、ゆえにA=C」という三段論法が実に鮮やかです。平行四辺形を2つ並べ、それ全体によってできる大きな平行四辺形に注目したことがポイントです。

もちろん、これには「平行四辺形の対する角が等しい」ということを先に証明しておかなければならないのですが、それは後で証明するとして、まずはこの論理の快刀乱麻ぶりに感心しました。

そしてH君は、すぐに同位角の言い換えである、錯角の場合も証明してくれました。

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最初は前と同じ苦労をしなければならないのかと思って、一歩を踏み出しにくそうでしたが、実は先に証明した事柄が「魔法」のように使えるので、むしろ証明はより簡単にできるのです。

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同位角でx=y=bができる。
対頂角でy=aが分かりy=bだから、
b=a

Q.E.D.

そうです。これでいいです。
「ほんまにこんだけでいいの?」「もちろん」「なんや、簡単やなあ!」とH君は喜んでいました。答案に大きく書いたQ.E.D.が頼もしく感じられました。

表記が簡単でも立派に1問を解いたことになります。もしこれが仮にテストだとして、同じ点数配分だったら、せっかく前に苦労した分、問2にあたるこれも解かないと損ですね。

一方A君は、図をあくまで補助として、「言葉」をふんだんに使って証明してくれました。黒々とした文の塊が、いかにも『原論』らしい美しい解答だと思いました。

(A君の証明)
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(本文)

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(図1)

図1の状きょうではA=Bです。線Gを二つに分けると図2になります、このとき線Pと線pは平行になるように細心の注意を払います。

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(図2)

線Qと線qをそれぞれのばすと線Q、線qは平行になります。すると、線Pと線p、線Qと線qはそれぞれ平行なので平行四辺形Tができます。

線pは直線なので(その間の角は)180°です。180°-B=Cなので、B=C(注:B+C=180°の書き間違い)になります。

平行四辺形の向かいあう角度は同じなのでC=Eになります。180°-E=Aになります。この計算式を書きかえると、180(°)-C=A、C+A=180(°)となります。

そうなると、(以下の計算より)A=Bになります。

180°-B=C  (…1)

C=E(より)、180°-A=E=C
180°-A=C  (…2)

((1)と(2)より)
A=B

Q.E.D.

A君は、特に「自分で仮定すること」と「仮定の結果から導き出されるもの」の区別を、また「これから証明すべきことがら」(従って使ってはいけないことがら)と「先に証明して使っても良いことがら」とを峻厳に区別しながら、筋道を立てて証明してくれました。そのことが実に素晴らしいです。上の「平行になるように細心の注意を払います」という表現に、「自分はそのことが分かって気をつけているんだぞ」という、意気込みが現れているように感じます。

線分にGやPとp、Qとqといった命名も、自分で指定できるものであり(細かく言えばそれにも一応のルールはあるのですが)、ここでは縦横に理論を駆使している様子が頼もしく感じました。どうやらA君は哲学に興味があるようで、こうした文章を書くことは好きなようです。

A君の証明にも、H君と同様、先に「平行四辺形の向かい合う角が等しいこと」を証明しておかなければならないのですが、それがあれば完璧です。

また、A君も余勢を駆って、錯角の場合も証明してくれました。

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図1は同位角(が等しいこと)からの図です。まず、a=bであることがわかります。
図2は同位角と対頂角をあらわしました。a=cでb=dになります。
a=c、b=d(対頂角)
a=b(dはbの書き間違い)、c=d(同位角)
c=b(これが示すべきことである)
Q.E.D.

答案では表記にやや混乱がありますが、同位角と対頂角を組み合わせて錯角が等しい(b=c)ことを述べています。

次回もまた、今回得た達成感を弾みにして、果敢に証明に挑戦してください。A君曰く、「今回証明したことがらでどこまで証明できるのかが楽しみ」だそうです。その意気や良し!

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