『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読む(西洋の児童文学を読むC、2021/9/16)(その2)

福西です。

(その1)の続きです。

アドバセンという地名も、「若葉おとめ」という遊びも、じつはファージョンが作った架空のものです。

それが「ぼかした味わい」を出しています。

しかし、ロマンスというものは、古い枝に生えるコケのように古い物語にまつわって生まれるのです。そして、マーティン・ピピンの物語というのは、ほんとうに古くて──あるひとたちは、一年たっているといい、あるひとたちは、二年もまえのだとさえいいます。これでは、どうして子どもたちにおぼえておれといえるのでしょう?

それはさておき、ここに、その物語の真相があります。

来週からさっそく、「若葉おとめ」の起源のロマンスを読んでいきます。

 

ちなみに、「若葉おとめ」には曲がついています。ファージョンの作詞作曲です。すごい凝りようで、作品に対する愛を感じます。邦訳には、巻末にその楽譜が載っています。

 

また、ファージョンは他にも、『Morning Has Broken』という曲に作詞しています。

芸術的な雰囲気に満ちた家庭環境に生まれ、学校ではなく家庭教師に教わり、本に埋もれた部屋で育ったファージョン。彼女の父親は、本棚からどんな本を取り出しても、「それが本である限り、読むことを禁じなかった」と、彼女の自伝にあります。

彼女の魅力は、語るに尽くせぬものがあります。

「『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読みたい!」という方がおられましたら、いつでもご参加をお待ちしています。