ことば2年(2021/7/7)

福西です。

クマのプーさんえほん(ミルン、石井桃子訳、岩波書店)の、『14 コブタのおてがら』を読みました。

風の強い日に、プーとコブタはフクロに会いに行きます。お茶をごちそうになるためです。

しかし、おじゃましたとたん、フクロの小屋がサイコロみたいに風に倒されてしまいます。

救助を呼ぼうにも、玄関が天井にあるために、外に出られません。

出口は、郵便受け箱のスリットだけ。フクロは飛べますが、体が大きくてスリットを通れません。

そこでプーの発案で、「郵便受け箱に、滑車のようにロープを引っかけ、コブタを玄関まで吊り上げる」と決まります。

このとき、コブタが心の中で「むりむりむり!」と言っているのが聞こえてきそうで、思わず笑えます。

フクロがコブタを乗せて飛べばいいじゃないかと思いますよね。

しかし、フクロはそんな重労働はしません。

「背部筋肉が……」云々と、一同をケムに巻く始末。

コブタは根っからの怖がりなので、

「もし切れたら?」

と本気でききます。

これに対するフクロの返事が、まるで他人事です。

「そのときは、またべつのひもでやりましょう。」

と。読者は笑いますが、コブタの脳裏では、上がっては落ちる自分が何度もイメージされます。次いで、これまでの「楽しかった日々」が走馬灯のように流れます。

 

ところで、このコブタとフクロのやり取りには、伏線があります。

フクロの家に行く途中、風で大きく揺れている木のそばを通るシーンです。

「もしぼくたちが下にいるとき、木がたおれたら?」

すると、プーは念をいれてかんがえたあげく、

「もしたおれなかったら?」

コブタは、この返事でやっと安心し(…)

とあります。要するに、コブタは、

「もし切れたら?」に対して、

「もし切れなかったら?」

と言ってほしかったのでしょう。

その「ズレ」が、今回一番の味わいどころでした。