『クローディアの秘密』を読む(西洋の児童文学を読むA・C)2021/5/6(その2)

福西です。

(その1)の続きです。

 

クローディアは家出を始めるに際し、「あたしたちはひとつなのよ」と宣言しました。

しかしそれはまだ頭で考えていることなのです。

二人は、じっさい血のつながりもありますが、家出という状況下で、「あたしたちはひとつではない」ことを思い知らされます。

そうした「気づき」が、物語の一つのポイントだと言えます。

ちなみに前章で謎として残った、「家出にいく」という表現ですが、原文を確認しました。

ジェイミー 「hide out(in)」=(中に)隠れる

クローディア「run away(home)」=(家)出する

ジェイミーは、森の中に(ギャングのアジトみたいに)隠れることを希望しました。

ジェイミニーにとって、今回の家出は「ごっこ遊び」であり、それ自体が目的です。

しかしクローディアにとって、家出は「自分探し」のための手段です。

「中へ」vs「外へ」。

そのベクトルの違いが、ジェイミーにとって「思い通りにいかないこと」でした。

今回は、クローディアが思い通りにいかない番です。

「私はのたれ死のう。そしてジェイミーに後悔させてやろう」と、心の中で復讐劇を演じるクローディア。しかしその妄想も、次のジェイミーの何気ない一言によって中断されます。

おねえちゃんは頭がいいと思うよ。ニューヨークって、かくれるにはいいところだね。だれかが他人には目もくれないんだもの(no one notices no one)」

頭のいいとほめられたクローディアはにっこりし、「だれも、よ(anyone)」と訂正します。

二人の心の距離が縮まったのでした。

 

(その3)につづきます。