『クローディアの秘密』を読む(西洋の児童文学を読むA、2021/3/18)

福西です。

『クローディアの秘密』(カニグズバーグ、松永ふみ子訳、岩波少年文庫)を、序章と1章の途中まで読みました。

序章では、ベシル・E・フランクワイラーという老婆が、弁護士に手紙を書いている様子が語られます。弁護士を雇い、相続の話が出てくることから、お金持ちであることが分かります。その老婆がこれから書く手紙が、物語の内容となります。要するに、一種の額縁構造になっています。

一章では、さっそく「家出」というテーマが(老婆の見聞きした話として)書かれています。

手紙の中の主人公のクローディアは勤勉家。十二歳。弟のジェイミーは節約家。九歳。

「今のクローディア・キンケイドでいることがいやになった」というのが家出の動機です。

クローディアは、その性分から、あらゆることを本で調べまくって計画を立てます。そしてなにより、家出にはお金が必要であることを理解しています。

地下鉄の回数券の使いさしを、家の掃除当番でゴミ箱から見つけたときなど、彼女の喜びようはこの上もありませんでした。まるで『モンテ・クリスト伯』のダンテスが牢獄でスプーンを手に入れた時みたいです。

クローディアは毎日のチョコレートサンデーの誘惑と戦いながら、少しずつ家出の資金をためます。

一方、ジェイミーは、同い年ではやっている野球カード(現代で言えばポケモンカードでしょうか)には一切手を出さず、おこづかいはすべて貯金。その額は相当なもので、最近ラジオを購入。大きな買い物をすることが彼の性分です。(そして「ラジオ持ち」であることが、彼が家出仲間に入れられた理由の一つです)。

また、ジェイミーは学校にバスで通うとき、「戦争」というトランプ遊びを日課にしています(雰囲気は、老人クラブのポーカー仲間みたいな感じです)。クローディアからは「よくまあ、飽きもせず」と冷たい目で見られています。そうした姉弟の価値観の違いと軋轢は、読者にも「あるある」で、愉快です。ジェイミーは、節約家だけれども、ギャンブラーでもあるのです。

クローディアが綿密に立てた計画やその変更に対して、ジェイミーが大蔵省のように予算を審議する。

そんな二人のやりとりが、これから始まります。

冬学期はこれでおしまいです。4月から仕切り直しで、序章から要約しながら読みます。

新しい受講生も、お待ちしています。

面白い物語なので、読んできっと損はありません!

 

『クローディアの秘密』を読むクラスは、以下の通りです。

・西洋の児童文学を読むA 木曜17:30-18:30 小学5~6年

・西洋の児童文学を読むC 木曜18:40-20:00 中学以上(大人の方も参加可能