『トムは真夜中の庭で』を読む(あらすじ紹介)その1

福西です。

『モモ』を読んでいるクラス(「西洋の児童文学を読むB」)の、次のテキストです。

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波書店)です。

原作の初版は1958年。モモよりも古い作品です。

「時」と「少年少女の成長」をテーマにした児童文学の古典です。

【あらすじ】

柱時計の鐘が真夜中に十三回鳴って、パジャマ姿のトムがアパートを出ると、目の前には庭園が広がっています。月の光の下で、庭園が手招きしているように、トムには思えます。

トムは庭園でハティという少女を目にします。ハティは両親を亡くし、おばさんの屋敷に引き取られています。ハティは、おばさんの子どもたちから仲間外れにされています。どんなに邪険にされても、後ろをついていく彼女の健気さに、トムは心をひかれます。トムもまた、弟のはしかのせいで、そりの合わないおじさんのアパートに隔離されています。いわば「囚われ」の身分です。一方、ハティもまた自分のことを「囚われの王女」だと空想しています。

ハティのおばさんは、「あの子はちっとも大きくならない」とぼやきます。ハティの心が時間を止めている原因は、ひとりでいる「さびしさ」でした。

トムとハティは庭園で遊びます。庭園が二人のさびしさを癒やしてくれます。

「トム、庭園のむこうの方にはなにが見えるの?」

ハティは、背伸びしても届かない庭園の外の光景を、トムにたずねます。トムは「油断大敵」と二人で名付けた木に登り、「川が見える」ことを伝えます。

ハティは外の広い世界を望み、「囚われの少女」という空想から次第に解放されていきます。一方、トムは「鐘が十三回鳴ったら」という秘密に心を奪われ、のめりこんでいきます。

やがてトムとハティの時間に、終わりが訪れます。

その2へつづきます)