『ギリシャ語初級講読B』クラス便り(2021年3月)

山びこ通信2020年度号(2021年3月発行)より下記の記事を転載致します。

『ギリシャ語初級講読B』

担当 竹下 哲文

前任の堀川先生から引き継ぐ形で開始したギリシャ語初級講読Bでは,春学期からA.E. Hillard & C.G. Botting, Elementary Greek Translation, London: Duckworth, 1982 [orig. publ. London: Rivingtons, 1923]を教科書として平易な古典ギリシャ語散文を読んでいます.

現在の受講生は1名ですが,昨今の状況にかんがみ,専らZoomを用いた遠隔実施という形をとっています.設備が整ったこともあり,冬学期からは講師も自宅から接続する形式に変更しました.

教科書に用いている本は,古代ギリシャの歴史を題材にして,ペロポンネーソス戦争でのアテーナイの敗北にいたるまでの様々な出来事を綴った文章が1ページごとに続いていく形式になっています.構成の都合上テキストの記述はときに省略的なため,そこで主題になっている事柄や歴史上の事件についての予備知識がある程度ないと話の流れや繋がりが見えにくい箇所もあります.そういう場面では必要な解説を加えるようにしており,そのぶん読み進むペースはやや緩やかですが,結果として古代ギリシャの歴史についても理解を深めることができているように思います.ちょうど本稿執筆時点で,アテーナイの僭主ヒッピアースの追放の箇所まで読み終えました.

また,章が進むにつれ文法的にも新しいトピックが出てくるため,それらをそのつど確認しながら読み進めています.既に学んだ内容でも,それらが実際のギリシャ語文の中で運用されている様子を見ることで,初級文法を終えて作られた骨組みに肉付けを行うことが狙いです.さらに,短いとはいえ複数の文が有機的に組み合わさった連続性のある言説を相手にする以上,接続詞やギリシャ語に特徴的な小辞(particle)の用いられ方にも注意を向けるようにしています.関心のある方は是非一度お問い合わせください.