10/10 歴史入門(高校)

岸本です。

イスラーム教は、現代世界でも多くの信者を抱える宗教です。

現代でもその影響力が大きいことは、イスラーム教の創始者ムハンマドを侮辱したとされる映画に対して、大規模なデモが生じたことなどから窺われます。

その歴史的背景を知ることは、世界が稠密になる現代において、教養の一つではないでしょうか。

今日からは、そのイスラーム教が広まった地域の歴史を学び、議論していきます。

 

まずは、イスラーム教の基本的な知識を確かめました。

基本的な教え、信仰の対象、ムスリムの義務など、良く知られていることもありますが、あまり知られていないこともあります。

例えば、イスラーム教でも天使が信じられていますし、教典コーランを補うハディースというものもあるのです。

そうした現代のイスラーム教が、どのように形成されたのか。ここで歴史の出番です。

 

イスラーム教成立以前、アラビア半島は農業や商業が発展したものの、周辺のローマやペルシアと比べれば、いわば辺境地域でした。

その都市の一つ、メッカでムハンマドがイスラーム教を創始しました。

当初はメッカを追い出されたムスリムたちですが、次第に勢力を拡大し、ムハンマドが生きている間にアラビア半島をゆるやかに統一します。

問題は、彼の死後でした。後継者をどうするか、「最後の預言者」ゆえの大問題です。

ムスリムたちは、ムハンマドの近親者から「カリフ」を選ぶことで解決を図りました。いわゆる正統カリフ時代です。

カリフの指導下、聖戦を名目に版図を拡大していきます。

ササン朝を滅ぼし、ビザンツ帝国から肥沃なエジプトやシリアを奪いました。

他方で、カリフの後継者争いは内戦に発展し、最終的にウマイヤ家のムアーウィヤがカリフを世襲化することで、ウマイヤ朝を創始することになるのです。

これ以降、ムハンマドの後継者をアリーの子孫のみとするシーア派が分かれ、多数派はスンナ派と呼ばれることになります。

 

生徒さんとは、正統カリフ時代の制度や統治の仕方が、あまりしっかりしたものではないのでは?と話題になりました。

カリフの選出や徴収した税を再分配する方式は、ともすれば原始的な共同体を想起させます。

その版図は広大でしたが、いまだ制度としては「未熟」だったといえるかもしれません。

しかし、逆に言えば、その「未熟」な制度でも広大な版図を一定期間支配できるほど、宗教という紐帯が機能したとも言えるでしょう。

生徒さんは、最近のニュースなどからイスラーム教にも興味を持ってくれたようです。

来週は、「未熟」な時代からイスラーム帝国と呼ばれるまで発展したアッバース朝と、その分裂を議論したいと思います。