山びこ通信2019年度号(2020年3月発行)より下記の記事を転載致します。

『歴史』

担当 吉川弘晃

 ここ数年来、小学生高学年向けに「れきし」クラスを開講していましたが、生徒さんが中学生になったのを機に、「歴史」クラスとして再編しました。一冊の教科書を半年から一年かけて精読することで、個々の知識だけでなく、それらの正しい繋がりを意識して歴史に向き合い、さらに現代世界に対する自分なりの問題意識を培うというのが、このクラスの基本的な姿勢です。しかし、授業時間が60分から80分へと増えたこともあって、新たに二つの点に力を入れて授業をするようになりました。

一つは、授業の中で「調べ作業」を実践することです。教科書を読んでいると知らない、あるいは身近ではない地名や概念が登場することがあります。そういう場合は、授業から多少脱線してでも、まずは地球儀や地図帳を使って該当する場所を調べさせたり、年鑑を使って「○○の生産量」や「○○額のランキング」といった頁をみんなで調べます。私たちは特に疲れている(従って頭を使いたくない)時、既に知っている知識を確かめるために読書をすることがよくあります。けれども、一冊の本からであっても、新しい知識や視点を得るためには、関係する複数の情報を並べて、比較・検討することが重要です。これは中学生はおろか大人でも労を要する作業ですが、みんなでやればお互いの情報や視点を交換しながら効果的かつ楽しくやれるでしょう。受講生の一人は毎回、教室に地図帳と年鑑をもってきてくれるのですが、彼のおかげで以上のことの重要性に改めて気づくことができました。

もう一つは、「言い換え」の練習です。数度に一回、講師とその協力者が日本古典の現代語訳を土台に作ったオリジナル教材をその場で解かせています。問題形式は様々ですが、その多くは傍線部の箇所を一定の条件に従って説明してもらうというものです。一般に他人が書いた文章を身につけようとする場合、⑴ 抜き書き(重要箇所をそのまま書き写す)・⑵ パラフレーズ(ある箇所の重要な点を別の言葉でまとめる)・⑶ コメント(本文全体の主張を短くまとめ、読者自身の考えを批判的に記す)という三つの方式がありますが、ここで問題にしているのは⑵です。教科書を使う回では、一定箇所を生徒さんに正しく音読してもらい、その上で講師が一つひとつの単語や文章について質問し、それに対して生徒は自分の言葉でまとめるよう求められます。「言い換え」練習の回では、この作業を口頭ではなく紙の上でやってもらうのです。(特に母語話者同士が)顔を合わせて行う会話は厳密な言葉遣いをしなくても伝わってしまう(ような気がする)のですが、実際に文字にしてみるとこの「なんとなく」は多くの場合、通用しません(論文を書く講師自身も日々、悩んでいることです!)。この試みが、自分の考えを相手に分かりやすく伝える、つまり「話すように書き、書くように話す」ための訓練になればと考えています。

なお、中学生の「歴史」クラスに加えて、小学生高学年を対象にした「れきし」クラスを新設する予定です。授業の性質上、「ことば」クラスとの同時受講をお薦めします。

【お知らせ】2020年4月新規開講!

『れきし』小学5,6年クラス 金曜 19:00〜20:00(予定) 担当 吉川弘晃

日本では小学生から日本の歴史(社会)を学びますが、歴史とはどの科目にもまして不思議と楽しさにあふれる学びです。なぜなら、過去に起きた人間が関わるあらゆるものを物語の形にして自由に考えられるからです。しかし、「自由」といっても、一つだけ重要なルールがあります。それは、物語の一つひとつに証拠を示して相手に理解してもらうことです。クラスでは、日本の歴史を理解するうえで基本的な道具を、国語や算数、理科の知識を引っ張りながら(歴史は知の総合格闘技です)、楽しんで身に付けていきます。

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