山びこ通信2019年度号(2020年3月発行)より下記の記事を転載致します。

『西洋近代思想の古典を読むA』

担当 谷田 利文

 この講座では、マキアヴェッリの『君主論』からスタートし、『ディスコルシ』に進んだ後、途中で理論的な整理をしたいという要望があり、現在は、國分功一郎氏の『近代政治哲学――自然・主権・行政』(ちくま新書)を読んでいます。

 古典を読む際、思想史の研究者には、当時の時代状況や、思想家の意図を理解し、時代錯誤的な解釈に陥らないことが求められます。一方で本講座のように、研究のためではなく古典を読む場合、時代も国も違う現代の日本人が読む意義を問わざるをえません。

 全ての本は時代の制約を抱えていますが、ロックの抵抗権の思想が、現代のギリシアで独裁を打倒する際に読まれたように、古典には時代や場所を超えた力があることもまた、否定できないように思われます。ロジェ・シャルチエは、読書とは著者の意図とは異なる誤読や読み替えが繰り返される過程だとしましたが、本講座においても、できるだけコンテクストをふまえながらも、古典がもつであろう力、思いがけない過去と現代の結びつきを、その読解と議論の中で期待したいと考えています。

 また、このような古典の普遍的な力に期待するだけでなく、優れた過去の古典を読むことは、現代当たり前のように用いられている言葉や制度をその起源から再検討する機会を与えてくれます。國分氏の著作は主権や民主主義の捉え直しを図る野心的なものですが、同じく私たちも古典の読解と議論を通して、現代社会に対して抱く様々な問題関心や疑問を、その起源から問い直す機会にしていければと思います。

 『近代政治哲学』を読み終えた後は、ホッブズ、スピノザ、ロック、ルソー、ヒュームと西洋近代思想の古典を実際に読んでいく予定です。関心がある方は、是非ご連絡ください。

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