山びこ通信2019年度号(2020年3月発行)より下記の記事を転載致します。

『ギリシャ語初級』 『ギリシャ語中級』A・B『ギリシャ語上級』A・B,
『ラテン語初級』 『ラテン語中級』A・B 『ラテン語上級』

担当 広川 直幸

今年度は大体昨年度と同じ授業を開講したが、ラテン語初級は申し込みがなかったので開講していない。また、ギリシャ語初級は通常のクラス授業ではなく、秋田から京都まで通ってくる受講生のために月に一回開講するという特別な形を取っている。まだ二月になったばかりで、年度末まで半学期分の授業が残っているが、それぞれのクラスの現在の状況を列挙すると、ギリシャ語初級は教科書(Thrasymachus)の初めのほうを学んでいる。ギリシャ語中級Aは相変わらずA. L. Barbour, Selections from Herodotusをテキストにしてヘーロドトスを読んでいる。ギリシャ語中級Bではアリストパネースの『リューシストラテー』を読んでおり、一回に40行程度というよいペースで進んでいるので、今学期中には終わりそうである。『リューシストラテー』が終わったら、すぐにプラトーンの『饗宴』を読み始めることになっている。ギリシャ語上級Aは引き続きアイスキュロスの『救いを求める女たち』を校訂上の問題を検討しながら少しずつ読んでいる。ギリシャ語上級Bはエウリーピデースの『バッカイ』を校訂上の問題よりは文法上の問題を注意深く検討しながら読んでいる。これには理由があって、Rijksbaronの非常に刺激的な文法的註釈が出版されているからである。

ラテン語中級Aはプラウトゥスの『捕虜』を読んでいる。『捕虜』は幸い新しいサルシーナ版が出ているので、それをテクストにしている。ラテン語中級Bは引き続きオウィディウスの『変身物語』を一回に40行程度のペースで読み進めている。ラテン語上級は授業休止期間を挟みながらも相変わらずプラウトゥスの『アンピトゥルオー』を少しずつ読んでいる。

それぞれの授業の進度については、学期末から学期初めの期間にインターネット上のホームページの情報を更新しているので、そちらを参照していただきたい。

さて、受講生に向けて一般的なアドバイスを書こうと思い、昨年の原稿を読み返したところ、書こうと思ったことと同じことが書いてあった。と言うことは、全く改善されていないということなので、今年はもっと具体的に同じアドバイスをしようと思う。

発音の大切さについては、折に触れて述べてきたが、全員に特別上手い発音を求めている訳ではない。可能な人は感情を込めた流暢な発音を目指して練習するべきであるが、そうでない人に求めているのは、聞いて分かる程度の発音であり、もっと言ってしまえば、発音している本人が自分が何を言っているのか分かる発音である。復元された発音を用いて古典語を学ぶ場合、模範になる母語話者がいないのであるから、妥当とされる復元音に従って、書いてある文字を発音すればよい。ただそれだけのことである。

ただそれだけのことと書いたが、これが出来れば2000年も前に書かれた古典の音の美しさをある程度今でも味わうことができるのである。一般的に言って、ギリシャ・ローマの古典は黙読の対象ではなく、演じたり音読したりして耳で聞くために書かれたものである。そのようなものを、発音はよく分からないが、何とか解読できるものとして扱うのは非常にもったいない。おいしい料理を目の前にして、食材や調理法は分析するが、実際に食べはしないのと同じことである。

具体的なアドバイスは、音読する習慣をつけるべしということに尽きる。周りに人がいるところで勉強しているので音読ができないというのなら、内語で(心の中で)音読すればよい。予習の際にもなるべく音読するのがよいと思うが、分からないこと(当然母音の長短を含む)を調べることに手一杯でなかなか実行できないだろうから、予習の段階の音読は予習の最後の仕上げとして行うぐらいでよいだろう。それよりも、授業で疑問点が解決して内容が分かるようになった後で、その部分を繰り返し音読するのが効果的である。授業の復習をしている人は、おそらくあまりいないのではなかろうかと思うが、予習よりは復習のほうがはるかに実りがあるので、復習として音読を行うことを強く勧める。

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