『ラテン語初級文法/初級講読』A・B・C, 『ギリシャ語初級文法』B クラス便り(2020年3月)

山びこ通信2019年度号(2020年3月発行)より下記の記事を転載致します。

『ラテン語初級文法』, 『ラテン語初級講読』A・B・C, 『ギリシャ語初級文法』B

担当 山下 大吾

 初級文法クラスは、従来通り岩波書店刊行の田中利光著『ラテン語初歩 改訂版』を教科書として用い、一学期制の速習コースが春学期に開講され、昨年9月開講の二学期制の通常コースが現在終盤を迎えております。いずれも受講生は通いの方のみならず、Skypeを通じて参加される形態の授業となりました。講師としてもこのような授業は初めての経験ですが、従来授業後の雑談などで応対していた細かな点に関してはメールを通して対処するなど不備のなきよう努め、これまでの所順調に経過しております。

講読Aクラスではキケローの『友情について』を春学期に無事読了しました。受講生Cuさんにとっては姉妹篇ともいえる『老年について』に続いての読了となり、以前にもまして自信を深められたようです。その後のテクストは、以前ギリシャ語初級文法を修了されたCuさんのご希望に沿い、ホメーロスの『イーリアス』一歌を冒頭から読み進めております。247行以下「蜜より甘い語り手ネストール」の件では、『老年について』31節のラテン語と見事にリンクする楽しみを味わうことが出来ました。このほかギリシャ語初級文法Bクラスがこの1月から、Skype経由の方々を含め三名の受講生を迎えて新たに開講しております。

Bクラスではウェルギリウスの『牧歌』を読了後『農耕詩』へと移り、現在二歌を講読中です。受講生は引き続きCaさんお一方、本文のみならず註釈にもしっかり目を通され、授業進行の上で有難く感じております。一篇ごとの纏まりがコンパクトな『牧歌』と比べ、作品の規模が大きく、あまり馴染みのない土壌や気候、ブドウ栽培などが主題となる『農耕詩』は矢張り難しい印象ですが、それだけに各所で幾度も反芻を迫られます。撰文集などでも抜粋して読まれることの多い「イタリア賛歌」(2.136-176)の最終行では、先行者ヘーシオドスに対する敬意のみならず、ウェルギリウス自身の将来の姿もかいま見え、交錯しているようです。

Cクラスではキケローの『老年について』を読み進めております。受講生は各学期それぞれで入れ替わりがありましたが、現在は春学期に初級文法クラスを修了されたTさんお一方がSkype経由で参加されています。9月に作品冒頭から読み始め、1月末現在で26節まで進みました。開始当初は初級文法での規模に比べ格段に長い文章に戸惑われていた様子でしたが、現在は註釈で取り上げられていた修辞上の技術にも注目し、それらを独自に見出そうとする姿勢も出てこられたようです。キケローの文章はそのようなテクニックの宝庫とも言えるものですので、文法的把握や内容確認を踏まえた上で、関心の幅を更に広げて頂ければと期待しております。