西洋古典を読む(2019/5/22)

福西です。

このクラスは、中学2年生のA君と、ウェルギリウス『アエネーイス』を読んでいます。

4/25から5/22に、1巻418行~560行を読みました。以下その個所を要約します。

418-445
アエネーアスはカルターゴーの町を見て驚く。建設中の活気がある。法が定められ、行政官と神聖な元老院議員が選ばれている。アエネーアスは「ああ、幸いなるかな」と感嘆する。その間、ウェヌスのかけてくれた靄のおかげで誰何されずにすむ。

→オデュッセイア7.37-77
(オデュッセウスは港や均斉のよい船、町の人々の集会所や、忍び返しを施して延々と列なり、高く聳えて見るも見事な城壁に目を奪われた)

446-493
アエネーアスはアカーテスを連れて、ユーノーの神殿にたどり着く。そこにはトロイア戦争の壁画がある。アエネーアスはその細部を順番に、つぶさに見て涙する。そしてアカーテスに向かって、「ここには歴史に対する涙がある。人間の行いは心に触れる」と言い、ようやく未来に希望を持つ。実のない絵(inanis pictura)で心を慰める。

→トロイア戦争の苦労(壁画の内容)=工匠の苦労=詩人(ウェルギリウス)の苦労
壁画から、カルターゴー人はトロイア戦争の勝者にも敗者にも惜しみなく共感していることを知ったアエネーアスは、助けを求めることができるだろうと希望を抱く。

494-512
ユーノーの神殿にディードーが登場する。ディードーの前に身柄を拘束された者たちが連れてこられる。それは嵐で行方不明になったトロイア人たちだった。アエネーアスは駆け寄りたい衝動を抑えて、成り行きを見守る。

513-560
イリオネウスが発言の機会を与えられる。彼はカルターゴーを野蛮の国だと非難しながらもディードーに歎願する。自分たちの王アエネーアスが生きていれば、すぐにイタリアへ出航できるように船を修理したい。もし彼が死んでいれば、シチリアのアケステス王を頼ることを許してほしい、と。

カルターゴー漂着の際、アエネーアスは次のように言って部下を励ましました。「これらのこと(苦しみ)もいつか思い出すことが喜びとなるだろう」(1.203)と。けれどもその時点では、まだ彼自身が未来に対する不安でいっぱいでした。ここは、その彼が、ユーノーの神殿の絵を見て希望を持った箇所です。

以前、天上のユピテルは未来のローマのことを語り、ウェヌスの不安を取り去りました。(1.256-296)

続いて、地上に降りたウェヌスはディードーのことを語り、アエネーアスの不安を取り去ります。(1.335-401)

事実、アエネーアスは神殿の絵を見て勇気づけられ、お供のアカーテスの不安を取り去ります。(1.446-493)

そして、次回読むところでは、ディードーはイリオネウスにこう言います。「私は苦しみを知らぬ者ではない。恐れを取り除くがよい」と。それをじかに聞いたアエネーアスは、ウェヌスのかけてくれた靄から飛び出し、ディードーの前に姿を現します。

「我こそはトロイア人アエネーアス」(Troius Aeneas)と。

ここでのアエネーアス(の意識)はまだ「トロイア人」であって、「ローマ人」ではないことを念頭に、読み進めていこうと思います。

次回は、561行から612行まで読む予定です。