ギリシャ語講読(2009.6)

以下は、やまびこ通信(2009.6)に掲載された講師からのメッセージです。

4月からギリシア語講読と称してホメーロスの『イーリアス』を読み始めました。一回に20から30行程度を読んでいます。受講生はお二方とも、昨年度の山の学校の授業で古典ギリシア語の初歩を学ばれた方です。

『イーリアス』は教科書で習うアッティカ方言とは異なる人工的な方言で歌われており、初級の教科書の知識だけでは読めません。ですが、そこはヨーロッパ最古の大叙事詩なので、学生向けの註釈書がいくつも出版されています。それらを利用することで、無理なくホメーロスの言語に慣れていくことが可能です。

この授業ではP. A. Draper, Iliad: Book 1を教科書に指定しました。アッティカ方言とは異なる形態については常に丁寧に註が付されているので、初級文法を終えたばかりの人が手にするのに適した本です。また、辞書を引かなくても読めるように書かれている点がとてもよい。少なくとも語学の初歩の段階で辞書を引きまくるというのは時間の無駄である以上に有害ですから。

『イーリアス』は全文ヘクサメトロンという詩形で歌われた詩です。詩であるからには音声面の鑑賞をないがしろにしてしまっては、原文で読む意味がありません。この授業ではまず正確に音読できることを目指しています。ホメーロスを音読するにはコツが要ります。現在はそのコツを習得すべく努力しているところです。

『イーリアス』第一歌を読み終わるころには、自力で他の巻を読む力が付いていることでしょう。それを目指して焦らず着実に進んで行きましょう。(文責 広川直幸)