山の学校ゼミ『社会』クラス便り(2017年6月)

「山びこ通信」2017年度春学期号より下記の記事を転載致します。

山の学校ゼミ『社会』

担当 担当 中島 啓勝

 開始当初は三名、そしてこの二年ほどは四名の社会人受講者の方々と勉強してきたこの「社会」のクラスですが、年長のお二人がご多忙のためしばらくお休みされるということで、春からは残り二名の方と僕の、これまでで最もこじんまりとした体制で授業を進めております。今まで毎週顔を合わせて一緒に学んできた方々とお会いできないのはとても寂しいのですが、自分の親よりも年上の方々が精力的な活動の結果やむを得ずこの授業をお休みされるということで、本当に頭が下がる思いです。これからも皆さんとは定期的に交流を続けていくつもりです。
 人数は変わりましたが、授業の内容は今までと変わっておりません。ニュースの解説と課題図書の講読を二つの軸に、世界の政治・経済・社会にまつわる問題について話し合いながら理解を深めることを目指しています。ニュースに関しては、主に「ニューズウィーク日本版」などの雑誌記事を抜粋して紹介しています。ただそれぞれの事件についての背景知識や追加情報をお伝えするだけではなく、複雑で入り組んだ諸現象の背後にどのような大きな思想的流れがあるのか、一見かけ離れているように見える複数の出来事に共通する問題は何なのかを、大局的に探ることを心がけております。そのためにも、東アジアや太平洋地域、ヨーロッパなどの普段テレビや新聞で目にしやすいトピックに偏らないように、南米や中東、アフリカ、そして中央アジアなどの地域に関するニュースもしつこく取り上げるようにしています。とは言え昨年から欧米諸国では重要な選挙が目白押しでしたので、こちらも見逃さないように丁寧に観察していく予定です。
 課題図書の講読の方ですが、こちらは現在、岩崎育夫の『入門 東南アジア近現代史』(講談社現代新書)を読み進めています。「東南アジア」と一言で言っても、非常に多様な歴史・文化・国家体制を持ち、その全体像を把握するのが困難なこの地域ですが、土着国家が乱立してきた時代から世界の成長センターとして熱い注目を受けるようになった近年に至るまでの歴史的経緯や実態を、わかりやすく解説してくれる好著です。東南アジアについて学ぶことはそのまま、ヨーロッパの植民地帝国主義について学び、日本の戦争について学び、更には東西冷戦について学ぶことでもあります。いわば、東南アジア史とは近代史の縮図なのです。今後の世界情勢を占うためにも、この本を読んでしっかり勉強しようと思います。