福西です。

『数学が生まれる物語を読む』(志賀浩二、岩波書店)を読んでいます。

今回は、テキストp19~23を読みました。ペアノの公理が登場しました。

「指折り数える」という行為の数的表現が「自然数」であるわけですが、

1,2,3,…

の「…」という素朴な表現を、何とか別の表現でとらえ直すことができないか、というのがペアノの考えたことです。

公理というのは、今のところは普通にルールのことだと思ってよいです。

そして、自然数とは、「いくつかのルール」を満たす集合である、と捉え直しました。ここで、「…」という表現が消えた! というのが、今回のあらすじでした。

これをサッカーに例えてみます。

「サッカー」って何?

Aさん:「ボールを蹴ってわいわい(…)やるスポーツ」

Bさん:「サッカーとは、

1)1チーム11人で、相手ゴールに入ったボールを1点とする

2)ハンドのルール

3)オフサイドのルール

4)ゴールキック、コーナーキック、ペナルティーキックのルール

…云々

といういくつかの(有限個の)ルールを持つスポーツである」

 

「自然数」って何?

Aさん:「{1,2,3,…}という集合」

Bさん:「自然数とは、

テキストp22にある

i)~v)の公理

を満たす集合である」

「サッカーって何?」と尋ねられて、そのルールブックを持って来る人はあまりいないと思います。それと似て、「自然数って何?」という質問に、公理を持ち出されると、見るからに話がややこしくなった感じがします。

しかしこの抽象性が、一体何をもたらたしたのか、立ち止まって目を凝らす必要があります。

自然数は無限集合です。

集合は「物の集まり」のことですが、数学の世界では、もはや有限とは限らないのです!

そして、最初の疑問は、1,2,3,…の「『…』とは何か?」でした。

今、それに対する一つの表現方法を得たのです。

すなわち自然数という「無限」集合に対して、「たった5つのこと」(有限の文章!)で表現しえたところに、感動があるのだと思います。

 

次に、ペアノの公理を、すごろくに例えてみます。i)~v)はテキストに対応しています。

i)は、「ふりだし」のマスがあること

ii)は、必ず「次のマス」があり、それも1つだけ(「別れ道」がない)

iii)は、「ふりだしに戻る」がないこと

iv)は、同じマスでの「足踏み」(ループ)がないこと

v)は、すごろくが1つにつながっていること(別々のふりだしから別々のすごろくが並行して存在しないこと)

というわけです。

上のルールに従う限り、結局作りうるすごろくとは、「ふりだしから1マスずつ無限に続く一本道のもの」ということになります。

 

v)について、テキストでは「袋を閉じる」絵で表現され、「数学的帰納法の原理とよばれている」と書かれています。

数学的帰納法とは、自然数の例では、

a)1番目の数が集合Nに含まれる

b)もし任意の番号の数(k番目)が集合Nに含まれるならば、その次の番号の数(k+1番目)も集合Nに含まれる

この場合、全ての番号の数がNに含まれると言える

ということです。

なぜなら、a)+b)より、2番目の数はNに含まれる…a’)

a’)+b)より、3番目の数もNに含まれる…a”)

a”)+b)より、4番目の数もNに含まれる…a”’)

と、延々と繰り返すことで、

すべての番号の数がNに含まれる(袋Nが閉じる)ことが証明できるからです。

 

最後に、ペアノの考えたルール(公理)以外にも、実は自然数を生成するルールの体系はあります。(別の切り口で考えることができます)

それが次回に見る、演算規則です。

ある数が存在する。

ある演算(足し算やかけ算)が定義でき、その演算結果に一定のルールが成り立つ。

その演算によって仲間を増やした数全体のことを、

「~数」と呼ぶ。

これを無理やりに例えてみます。すると、サッカーって何?と尋ねる人に、サッカーの練習動画を見せて、「今の練習がシュート、今の練習がドリブル。今の練習がパス…これらのボールに対する技術すべてを組み合わせて、ライン内で演じることが可能なスポーツ」とでもなるでしょうか。

テキストでは一応、ペアノの公理を先に据えて、自然数を定義し、そこから自然数の性質として演算規則を説明しています。ところが公理によって表されるものと演算規則によって表されるものとは同値(ともに自然数)なので、実はどっちを先に据えても構いません。(自然数とは、こうも言えるし、ああも言える、と読んだ方が、むしろ頭に入りやすいのではないかと思います)

素朴なイメージで表現するか、ルールブックで表現するか、練習動画で表現するか。

来週は、その「練習動画」で自然数のイメージを掴む話になります。

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