福西です。4月から新しく始まったクラスです。よろしくお願いいたします。

数学は、教壇の上から先生によって与えられるもの、あるいはもう少し別のたとえでいえば、私たちにはあまりなじみのない数学という大地から、長い歳月をかけてみのった果実を、先生がもぎとってきて、これは方程式の果実、これは関数の果実として私たちに与えてくださるようなもの、というイメージが、一般の人にかなり行きわたってしまったようにみえます。

(中略)

だが、学校というものをひとまず離れて、数学という主題のほうに中心をおいてみたら、どのようなことになるでしょうか。そのとき数学を育てる母胎は私たちの中にあり、私たちは私たちの中にある数学の種子ともいうべきものから、小さな苗を育てるように、大切に数学を育てていることに気がつくでしょう。(略)私がここで展開していく物語は、私たちの中から数学が生まれ育っていく物語なのです。

──『数学が生まれる物語 第一週 数の誕生』読者へのメッセージ(志賀浩二、岩波書店)

ガイダンスで、「帰納」と「演繹」という言葉に触れました。その後で、上の文章に出会いました。前半部分が演繹、後半部分が帰納にあたります。私の言葉が足りなかったところは、来週また紙に書いたもので説明します。

この日は、冒頭の『読者へのメッセージ』と、『月曜日 小さな数から大きな数まで』をp3まで音読しました。

そこで、「抽象」という言葉が出てきました。今回は私がそれについてレクチャーしました。(生徒たちには次回からレクチャーをしてもらいます)。

【抽象って?】

「抽象的」の反対は、「具体的」。「具体的」という言葉はよく使われるので、それの「反対」を思い浮かべればよい。

つまり、抽象的とは、「具体的でない」ということ。

そして抽象化とは、「具体的でなくする」ということ。たとえば、りんごとみかんといった、あるいは大きさといった、個々の違いを「捨てる」ということ。

では、「捨てる」ことに「手間」をかけることで、一体何の「いいこと」があるのか?

たとえば、りんごが6つあっても、丸ごと全部は食べにくい。けれどもそれをしぼって、リンゴジュースにすれば飲みやすい(ただし食感は味わえない)。ここで、ジュースにして飲みたいというニーズがある限り、それにかける手間には意味があると言えるだろう。

抽象とは、ぎゅっとしぼって、エッセンスを抜き出すこと。エッセンスとは、それがなくなると、それでなくなってしまうところの、大事な部分。

エッセンス(だけ)に注目することには、デメリットもあるが、物事の核心を浮き彫りにできるというメリットがある。

つまり、抽象化とは、問題をより難しくすることではなくて、むしろより平易にするということである。一見複雑な問題を解きほぐし、また個々につながりの分からなった問題を広く見渡して、総合的な視点を得ることである。

たとえば、大文字山に登って、京都の町を広く見渡せるようなことを思い浮かべてみよう。視点を高みへと持ち上げることを。当然、高く登れば登るほど、町で歩いている人や物の区別はしづらくなる。「あ、~君!」と手は触れなくなる。けれども、「あそこに行くには、ああいって、こういけばよい」というように、大きなつながりが見える。そうして、新しい問題を発見したり、解決したりできる(これが帰納)。

そして具体的とは、その反対に、京都の町中を実際に自分の足で歩くようなことである。それは地に足の着いた、細部に「納得」のいく経験になる。だから、一度山の上から見て、光って見えるところ、あるいはぼやけて気になったところを町中に見つけたら、今山の上から見た光景を地図にして、その現場目がけて降りていけばよい(これが演繹)。

さて、テキストにある抽象とは、りんご3つという物事を「3」という数字に置き換えることだった。では、そうすることで、何のいいことがあるのか?

たとえば一つ挙げると、

3+3のような「計算」ができるということである。

けれどもこれは「具体性を捨てる」ことでもあるので、だまされてしまうこともある。たとえば、モズがカッコウの卵を気付かず温めてしまうのは、卵の形状ではなくて数で把握している誤解から生ずる。

結局のところ物事というのは、抽象と具体(帰納と演繹)との行ったり来たりが必要である。

私が思うに、この両方の行き来こそが、「学問」ということではないか。

と述べました。最後の「私が思うに」のところは当然眉唾で、この後の議論が必要です。ただ今回は時間が押し迫ってしまったので、またいずれ意見を交わし合えればと思います。

 

最後に、テキストをいったん脇へ置き、PCを使って簡単な実験をしました。

いろいろな周波数の音やその和音を作りました。

次回以降に出てくる「ピタゴラス」と「分数」について、その導入になればと思います。

 

次回の範囲は、テキストのp12までを読みます。

p9の「驚きを忘れてはいけないだろう」と、p11の「ピタゴラス」について、レクチャーの準備をしておいてください。

なお、授業の進め方については、「こちら」をご覧ください。

まだ定員には空きがあります。上記のようなことに興味のある中高生の方は、ぜひお待ちしています。

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