「山びこ通信」2017年度冬学期号より下記の記事を転載致します。

山の学校ゼミ『社会』

担当 中島 啓勝

 皆さんは「サウスパーク」というテレビ番組をご存知でしょうか。アメリカのケーブルテレビから始まり、今では世界中で楽しまれている、ブラックジョークあり、社会風刺ありの過激なコメディ・アニメです。この「サウスパーク」の中心的な制作者が先日、オーストラリアのテレビ番組に出演し、ドナルド・トランプ米大統領に関する風刺ネタを今後は扱わない意向を表明しました。トランプ氏が大統領選に出馬するずっと前から、彼を取り上げて笑い者にしてきたにもかかわらず、です。彼らによると、「もう一筋縄ではいかなくなってきた。風刺が現実になってきたから」「現実に起きたことの方が、自分たちが考えるパロディより、ずっと滑稽。だからある意味ちょっと後ろに引いて、彼らは彼らのコメディをやり、僕らは僕らのコメディをやろうというスタンスに移行した」とのことです。
 もちろん、彼らの意見がアメリカの大多数の意見を代弁しているという保証は何もありません。しかし、「風刺」が現実になった今、トランプ政権はトランプ政権の「コメディ」をやればいいという、そんなあきらめにも似た皮肉は今のアメリカそして世界を取り巻く現状を象徴しているような気がします。これまででは考えられなかった冗談のような現実が押し寄せてくる中で、人々はなすすべもなく立ちすくんでいるかのようです。イギリスによる欧州連合(EU)離脱表明もその一つかも知れません。ヨーロッパの広域秩序と経済的繁栄に大きな責任を持っているはずのイギリスが、率先してEU存続の危機を招きかねない選択をしたという事実の重さに、世界中の人々が驚きました。
 ただ、ここで決して忘れてはならないのは、こうした「コメディ」は全て各々の国民による民主的選挙によって導かれた結果だということです。別に無理やり押し付けられたのではなく、あくまで正当な手続きに基づいて「風刺」は現実となったのです。民主主義というシステムが万能ではないことはもちろん、そもそも大勢の人がそれまでの政治や社会のあり方に不満を抱いていたからこそ選挙は今の結果を選んだのだということを、しっかり確かめる必要があると痛感させられます。
 そういうわけで、この授業ではこれからも現在の民主主義が抱える問題を中心に、海外や日本のニュースを解説していきます。注目は春に行われるフランス大統領選、そして秋のドイツ連邦議会選です。また、課題図書の講読では、政治・経済に関連する本だけではなく哲学・思想や歴史などのテーマも取り扱っていきます。現在は岡本裕一朗『いま世界の哲学者が考えていること』(ダイヤモンド社)を読み進めているところです。受講者の皆さんも回を重ねるにつれこれまで以上に活発に発言してくださるようになり、理解と共感とともに、議論もまた深まっている実感があります。ご興味のある方はいつでもお気軽にのぞきに来てください。お待ちしております。

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