『かず』2~3年、3~4年 クラス便り(2016年11月)

「山びこ通信」2016年度秋学期号より下記の記事を転載致します。

『かず』(2~3年、3~4年)

担当 福西 亮馬

 毎週、生徒たちが意欲的に取り組んでくれるので、あっという間に時間が経つというのが私の第一感です。生徒たちの心の時計もそうであるといいなと思います。クラスでは、手渡すプリントの内容が、得意であれば見守り、困っていたら途中経過を確認し、最終的には自分で答にたどり着くことに達成感を得ることを目的としています。
 今学期は主に自作のプリントを使い、学校で習っていること(特に筆算などの計算規則)の確認をしています。そのかたわらで、ある時は、まちがい探しを通し、文章題のような1問に対するねばり強さ、集中力を上げることをしています。またある時は、パズルを解き、考えることが好きであることを支持しています。
 2〜3年生では、引き算の筆算、位の概念、かけ算、単位の変換、目もりの読み方をしました。
 3~4年生では、2乗の数、0の多い計算、かけ算の筆算、割り算、単位の変換、目もりの読み方を復習しました。これらは今後全体の土台ですが、特に0を増やしたり減らしたりする操作に慣れることは、もしその生徒が理工系に進むのであればそれが固い地盤になります。
 また私が大事だと思うのは、「1目もりがいくら分か?」という考え方です。たとえば10個の目もりがあってその端の値が0と20であれば、1目もりは2です。5個の目もりがあってその端の値が10と25であれば、1目もりは3です(ここに割り算を勉強する必要性が増します)。1目もりが分かれば、あとはどんな場合の数量でも読むことができます。
 算数ではこのように、まず「1を知る」ことを大切にします。つまり逆思考の練習です。それは顕微鏡でいえば解像度を上げることに当たります。1の解像度が上がれば、それは全体像を10倍、100倍したことになります。
 私は算数教育の専門家ではないのであまり大したことは言えませんが、私の感触としての算数とは、0と1を探すことから始まって、ほとんどそこにまた帰って来るように思います。まず、どこから出発するかという0(基準点)の確認。次に、そこから、いくつずつ増えているのか、その状況で1(基準量)にあたるものは何かということの分析。その2つをおさえれば、あとは1にあたるものを何倍かしたり、何分の1かしたりすることで、(前提を飛び出さない限りは)どんな場合にでも対応できます。この例を、中学生の知識で表現し直せば、y=ax+bのa(傾き)とb(切片)を知り、(定義域に対して)一本の直線を引くという作業に当たります。
 算数が得意になると、物事に見通しをつけられるようになります。そしてその見解(たとえば1次や2次関数のグラフ)を明示することで、多くの人が「なるほど」と納得できる認識の土台を提示することができます。だからこの科目は今後も大事なのだろうと予想できます。
 小学校の間に「これ」をおさえて中学校に上がってほしいという概念に、「割合」があります。人の多さや物の詰まり具合、鉄や銅の重さを比べる時に考える密度、濃度、速度、そして確率もまた「割合」に含まれます。その割合は速度に、速度は関数の接線(傾き)に、関数の接線は微分に、それぞれ新しい概念として橋渡しされていきます。そしてその計算の母体が、分数です。分数の正体は割り算です。だから割り算は大事です。それなので冬学期は3~4年クラスでは、割り算をメインにおさらいする予定です。(2〜3年クラスはかけ算)。
 図形は、目に見える数として具体的(心を納得させやすい例として貴重)です。計算は、パワフルです。そして割合は、より深く理解する時の分析手段です。これらは幾何、代数、解析という3つの分野として、中学の数学で登場し、高校、大学以降の数学の中で統合されていきます。小学校の勉強は、その「1」となる基礎を学んでいます。ぜひ、その解像度を上げていきましょう。