『しぜん』A・B1・C1・C2 クラス便り(2016年11月)

「山びこ通信」2016年度秋学期号より下記の記事を転載致します。

『しぜん』A・B1・C1・C2

担当 梁川 健哲

山びこ通信’16秋(web版)Aクラス、B1クラス
「木の枝にロープを引っ掛けてブランコのような遊びができないか」。Aクラスでは春学期最後の日、ロープを携えてみんなで森の奥へ向かいました。その道中、「先生!ロープ!」と叫んで、列の先頭にいた4年生が駆け戻ってきました。私からロープを受け取ると、急な坂道の上に先回りして、さっと木の枝にロープをくくりつけ、1年生達を掴まらせ、導いてくれます。
山頂の少し開けた場所に着くと、「ねえ、綱引きしようよ!」とみんなが言い出し、綱引き大会が始まりました。「女チーム」対「男チーム」、「学年混合チーム対決」、「K君(4年)」対「女の子3人(1年)」、「みんな」対「センセイ」…。力試しは続きました。一方、目的にしていた「ブランコ」は、木の枝にロープを引っ掛けただけのものですが、大きな弧を描いてゆったりと揺れ、これも大人気です。
以来、体を使った遊びから始まった「お山のオリンピック」。チーム対抗リレーや障害物競走など競技が増え、そのコースやルール、障害物の種類など、毎回みんなが活発にアイデアを出しあって発展を続けています。

山びこ通信’16秋(web版) B1クラスでは初回、秋から加わった新入生を「秘密基地」へ案内するところから始まりました。夏休みを経て少し崩れてきたこともあり、折角新しい仲間を迎えたので、新たな「秘密」の基地を作ろうという計画も持ち上がりました。そんなことを話し合いながら森を散策していると、あっという間にクラスの時間は過ぎていきます。ある日は、小さな焚き火を起こして、1年生を歓迎する「ミニバーベキュー」も行いました。
また別の日、1年生と2、3年生の距離がさらに縮まってくれればと願い、このクラスでも長いロープを持っていきました。Bクラスでは以前から、ロープが手元にあると、行き道で電車ごっこのような形が生まれ、この日もみんなが連なりました。
広場に登り着くと、果たして「綱引き」や「リレー」が始まります。少し走る自信の無かった子は「審判」役を買って出たり、場を盛り上げるために上級生が「応援」を披露してくれたり、自然に役割を見出していきます。

このように、A・B1クラスでは、創造的な遊びの発展があります。たくさん笑って、汗びっしょりになって、クタクタになるまで駆け回ったので、夏休み前にみんなで仕込んでおいた「梅ジュース」も、もう残り僅かです。

山びこ通信’16秋(web版)C1クラス
秋学期初日、Fちゃんが「お家をつくってみたい!」と提案してくれました。「材料」、「必要な道具」などの項目を自らホワイトボードに書いて、リストアップしていきます。「壁の材料はダンボールを使って、しぜんの中で見つけた材料も使ってね、落葉を壁一面に貼り付けていくの。そうだ、屋根も葉っぱで出来ないかなぁ。普通の葉っぱじゃないよ、出来るだけ大きな葉っぱをね、『葉っぱ図鑑』を作った時みたいにラミネートしてね…。」次々と湧いてくるイメージを私も共有しながら、早速試作に入りました。実際手を動かし始めると、構造や強度の問題にぶつかったり、また新しいアイデアが浮かんだりします。
大人が手伝えば持ち運べるほどの、小さなお家。それを、森の中の「どこかいい場所」に置いたときのことを思い浮かべながら、制作は進んでいます。「ランドスケープ(景観)」或は「シークエンス(移動とともに変わる景色)」を考える楽しさを知る機会になればと期待しています。

C2クラス
夏休み明け、「沢蟹を食べたい」というみんなのリクエストもあって、いつものように沢へ向かいました。水辺の大好きなみんなは、すっかりと沢蟹獲り名人になっていますが、この日は何故だか悪戦苦闘、なかなか見つかりません。火の支度もしておかねばならぬため、手分けをお願いすると、Yu君が名乗りをあげてくれました。できるだけ乾いたものを集めたり、長すぎるものは折ったり、一生懸命作業してくれます。すぐ横で、「あ、いたいた!」「そっちいった!」などと叫びながら、捕獲チームも頑張っています。

やっとのことで一人一匹分捕まり、焚き火も準備万端です。ステンレスボールの中でうごめく4匹の蟹、その一匹をトングで掴み、熱した油へそっとY君が差し出します。
「うわぁ、僕は入れるところは見ないよ、かわいそうだもん」「ぼくも〜!」とっさにU君、A君が駆けて行って、少し離れた木の陰からちらっと顔を覗かせています。
「ジュワ〜ッ…」手際よく揚げられていく蟹。「僕、やっぱり食べるのやめて、連れて帰る…。」最後の一匹を直前でボールからつまみあげ、K君が見つめています。
数分後、揚がった3匹の沢蟹を、紙皿にとりわけました。先程木の陰に隠れていた二人、特にA君は「僕は食べないでおく」と宣言していましたが、気付けば「うん、うまいうまい」と美味しそうに食べています。サクサクと音がし、芳ばしい香りが漂ってきます。
山びこ通信’16秋(web版)
可愛がる対象だったものが食材に転じたり、またその反対であったり。小さな沢蟹たちは、みんなに命を学ばせてくれる「しぜんの先生」のひとりです。