『かいが』A・Bクラス便り(2016年6月)

「山びこ通信」2016年度春学期号より下記の記事を転載致します。

『かいが』A・B

担当 梁川健哲

山びこ通信’16春(完成)B5● 線にこだわってみよう
 春学期の最初には「線」の話をしました。「線で絵を描く」。誰もがこれまで何気なくしてきたことでしょう。線は絵画を構成する極めて基本的な要素の一つです。だからこそ奥が深く、線の強弱や、引くときの速さによっても、そして使う画材によっても色々な線があり、絵に表情を与えてくれます。
 描画材として、墨汁と、割り箸や竹串、つけペン、大小の毛筆、およびインクペンを並べておき、試し書き用紙を用いて自分にしっくりくる画材、あるいはモチーフの表情に合いそうな画材を選んでもらいました。着彩の有無は自由ですが、線の表情を邪魔しないよう、パステルを用意しました。
 モチーフとしては、筍が人気でした。やはり、筍のもつ性格がそうさせるのか、力強い線で輪郭を描く人が多かったです。また、墨の持つ雰囲気がそうさせるのか、俳句を添えてくれる人も。その他、外で拾った木の枝や鳥の羽でどんな線が描けるか実験してくれた人もいます。
 
● 混色を楽しもう
 次に、「色」の話をしました。今回は、絵の具で積極的に混色をし、色を探求するために役立つヒントを幾つか伝えました。大きめのパレットを使ってその中にどれだけ色のバリエーションを置けるか早速実践しながら描いている人がいます。敢えて3原色でトライする人、12色セットを使う人、画用紙の大きさも様々です。
 引き続き、人気の画材、パステルに没頭している人も数名います。ふと見ると2年生のAちゃんが画面上のパステルの粉を水筆で伸ばし、一見すると絵の具で描いているような画法を発明しています。「一色なのに、こんなに色(の濃さ)がちがうよ!」
 また、パステルを削って粉にしたものを混ぜあわせる混色方法がみんなの間で自発的に試されていましたが、今度はそれを水で溶く人が現れます。見た目は水溶き絵の具のようです。「先生、これ取っておきたい!」そこで、小さいチャック付きポリ袋を渡しました。「出来た色に、自分で名前をつけても面白いかもね。」私が言うと、みんなは「水溶きパステル」を作っては袋に入れ、「美味しい抹茶」「薔薇」「そうげん」「チョコレート」などとそこに名前をつけていきました。
 「先生、これって絵の具と一緒?」よい質問がSちゃんから出ます。そこで、パステルと絵の具の仕組みについて比較解説しました。絵の具は「色の素」を「接着剤」の役目をするもので練ってありますが、パステルにはそれがなく、紙の繊維に入り込んで定着しています。
 すると今度は、パステルの粉を、糊で練ったりボンドと混ぜあわせたりする人が出てきました。原理的には自分で絵の具を作っているようなものです。それは、「『原料探し』から始める絵」と題して数年前に行った、自作絵の具による制作課題に通じていました。その話をすると、「やってみたい!」とYちゃんが言ってくれました。
 「何か、かいがクラスって、実験しているみたいだねぇ。」「そうそう、そうなんです。かいがクラスは、実験の場所なんです。やってみようと思ったことは、どんどん試していいんです!」一人がクラス開設当初からのモットーに気づいてくれたので、私もつい、声を大にしてみんなに伝えました。今年度も、良き学び合いの流れが出来つつあります。これからの展開をどうぞお楽しみに!