『しぜん』A・B1・C1・C2 クラス便り(2016年6月)

「山びこ通信」2016年度春学期号より下記の記事を転載致します。

『しぜん』A・B1・C1・C2
担当 梁川健哲

山びこ通信’16春(完成)B5 A(火曜)クラスでは、「秘密基地」に新入生を案内するところから始まりました。森の奥に着くと、辺りを用心深く見回してから、みんなで秘密基地へと滑り込みます。「わぁ、昔のおうちみたい!」1年生たちは、竹のベンチに並んで腰掛け、感嘆しています。「ここが窓」「ここが秘密の出入り口」と得意げに解説してくれる先輩達。「絶対に僕たちだけの秘密だからね。」
そして今度は、「仲間入りの儀式」であるかのごとく、基地から続く斜面の「滑り台」を代わる代わる何度も滑り、みんなでお尻を真っ黒にして遊びました。豪快に滑って勢い余っても、柔らかい土や木立ちがそっと我々を受け止めてくれます。
「あ、まって!」時折声を上げるのはAちゃん。押しのけられた落ち葉の下に木の芽が生えているのを発見し、大事そうに脇へ除けます。
3〜4年目を迎え、日増しに「先輩」になっていくみんなの中に、温かい眼差しがあるのを感じます。自然との、そして仲間との絆が、またこの一年間を通して深まって行くことを期待しています。

山びこ通信’16春(完成)B5 B1(木曜)クラスにも「秘密基地」があり、みんなにとっての拠り所となっています。この季節、沢も人気のある場所なので、どちらへ向かおうか、というのが毎回悩ましい問題です。学年も、その日の気持ちも違う仲間同士、すんなりと折り合いがつかないこともありますが、大抵の場合は気が付けば意気投合しています。筍掘りをしたときも、互いに助け合う場面がありました。回を重ねる中で、仲間を思い遣る気持ちが一層育まれていくことを願っています。
最近流行っているのは「武器」を集めることです。ふと拾い上げた枯れ枝が、手に持ってしっくりくる時の、何とも言えない高揚感。魔法の杖や剣、時にはSF映画にでも登場しそうな流線型の光線銃が落ちていることもあり、それらは嬉しい驚きをもって即座に宝物となります。いつの間にかみんなで弓矢作りをしていた日もあります。弦だけは凧糸を利用しましたが、弓らしい形をした枝も、まっすぐの矢も、探せばそこに見つかります。
「次回は弓飛ばし大会をしようか」「クサイチゴの実が生る頃だよ、食べたいね」そんなことをみんなと話しながら、クラスは展開していきます。

山びこ通信’16春(完成)B5山びこ通信’16春(完成)B5 C1(月曜)クラスでは、5月の連休前に筍掘りを提案しました。ところが、「え〜、僕、タケノコ苦手。」「私も。最近、給食もタケノコばかり・・・。」と乗り気ではありません。それでも私には「掘りたてを焼いて食べる」ことの楽しさに確信があったので、「この時期にしか出来ない特別なことだから、いつもと違うかもしれないよ!」と言って、みんなを筍探しへ誘いました。
筍を見つけること、そして掘ることは、味とは全く別物のようで、二人は夢中になっていました。そうした楽しい道中にも、山の恵みを頂くときには決して欲張ってはいけないこと、慎ましい気持ちを持つことを伝えるように心がけています。
薪を組み、マッチを擦り、火が十分に育ったところで皮ごと筍を投入し、火力を保つために薪を焼べていく。その小一時間ほどの過程も、飽きないものです。真っ黒こげに焼き上がった筍を取り出して包丁で割ると、黄色っぽく色づいた身が現れ、焼きトウモロコシのような甘い香りが広がります。皮を剥いた筍の先を神妙な面持ちで見つめ、二人はおそるおそるかじりました。
5秒くらいして、「あっ!」と大声でN君が叫びました。Fちゃんも首をかしげながらにこにこ笑っています。その先の説明は要らないでしょう。してみて本当によかったです。
焚き火を消して、最後に山の神様、火の神様に感謝を込めて「有難うございました」の挨拶をしました。

山びこ通信’16春(完成)B5 C2(月曜)クラスの5人はとにかく活動的です。雨でも構わず外へ出かけます。特に沢での活動が好きで、水辺の生き物を見つけることが得意です。
この春学期には、沢蟹やカエルをはじめ、ヨコエビ、特大のヤゴ、小さい蛇、他にも鹿の骨といった発見もありました。
沢にはヤゴと見紛うような赤茶けた落葉がたくさん落ちているのに、よく見つけたなぁとひたすら感心しながら、私はA君に訊ねました。「そのヤゴ、お家で育てられるの?」「育てられるよ。トンボになって、部屋を飛び回ったこともあるんだよ。」これには脱帽です。「前に採った沢蟹、ごはんあげていたらすごく大きくなったよ。」とR君も教えてくれます。
捕獲した生き物を、そのあとどうするかは基本的に各自に考えてもらっています。その場で放す場合もあれば、持ち帰って育てる場合もあります。指を挟む沢蟹のハサミの力、飛び跳ねたカエルが手のひらに当たる感触。手にとってみなければ感じることの出来ない命の躍動を、今、みんなは体の中にせっせと蓄えているところなのだと思います。
時には思いがけず手の中で生き物がぐったりとしてしまうこともあります。それとは逆に、調理して美味しく頂くという体験(沢蟹の素揚げ)も、みんなは昨年度、小坂先生のもとで積んでいます。
体に刻まれたそうした感覚の全ては、命の理解、生き物たちへの愛着として結晶し、これからもみんなの心の中で膨らんでいくことでしょう。