「山びこ通信」2016年度春学期号より下記の記事を転載致します。

山の学校ゼミ『社会』 

担当 中島 啓勝

 この授業では、新聞や雑誌などから気になるニュース記事をピックアップして、それをわかりやすく、かつテレビなどではなかなか取り上げられないような角度から解説しています。対象は世界の政治・経済ニュースが中心ですが、エンターテインメントやITなどの話題に加え、日本国内のニュースも紹介しております。現在は四名の生徒さんたちと一緒に、和気あいあいとした雰囲気でああでもないこうでもないと話し合っています。
 ニュース解説のほかに、もう一つの軸として課題図書の講読も行っています。「講読」なんていうと何やら物々しい印象がありますが、一人なら挫折してしまいそうな、いやそれどころか自分だけならそもそも手に取ってみることもなかったような専門的な内容の本を、みんなで毎週少しずつ読み進めていって気軽に感想を語り合うコーナーです。ここ最近では、作家の阿川弘之さんの息子でタレントの阿川佐和子さんのお兄さんでもある、法学者の阿川尚之さんが書かれた『憲法で読むアメリカ史(全)』(ちくま学芸文庫)を読み進めてきました。弁護士でもある阿川先生が、アメリカの歴史をたどりながら、憲法とはいったいどういうものなのかということをとても読みやすい文章で解説してくれる好著です。生徒さんたちとは「リンカーン大統領が露骨に憲法を無視した強引なリーダーだったとは」「最高裁判所って社会にこんなに深く関わっていたのか」など、新鮮な驚きを共有しています。近年、ここ日本でも政治のリーダーシップの問題や憲法の問題がニュースを賑わせることが増えてきましたが、この本はまさに、こうした状況を理解する上で大きなヒントを私たちに与えてくれます。
 以前からこの授業では、「現代は民主主義の限界と危機の時代か?」という観点から、様々なニュースを分析してきました。そのことに関連していうと、今回の本に出てくる重要な論点の一つに、「民主主義」と「立憲主義」の関係、それも対立関係が挙げられます。「民主主義」と「立憲主義」の対立とは、「みんなの意見を政治に反映すること」と「憲法をしっかり守ること」が、時に対立してしまうのではないか、ということです。そして、もしこの二つが衝突を起こす場合、国の平和を守るために本当に大事なのは、「民主主義」なのか、それとも「立憲主義」なのかという、非常にややこしくて、ともすればつい感情的な言い合いに陥りやすい問題が浮かび上がってきます。しかし、このような難しい問題を、穏やかな雰囲気で楽しく学べるところがこの授業の特色だと、秘かに自負しております。
 この授業では新しく参加してみたいという方を随時募集しております。政治や経済に関する前提知識は全く必要ありません。新聞やテレビ、インターネットなどでニュースを見ていて、ここがよくわからない、ここをもう少し詳しく知りたい、という方はどなたでもお気軽に覗きにいらしてください。お待ちしています。

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