ことば2~4年(0630)

福西です。

次の和歌を紹介しました。

夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも

よにあふさかの せきはゆるさじ      (清少納言)


今回は歌の紹介と一緒に、中国の故事(孟嘗君の「鶏鳴狗盗」)を紹介しました。

むかし中国に孟嘗君という人がいて、食客三千と言われるほど、たくさんの人材を集めていました。その中に一人、鶏の鳴き声をまねるのがうまい人がいました。彼はそれ以外には全く役に立つことがなかったのですが、孟嘗君はそれでもかまわずに彼を食べさせ住まわせていました。

ある時、孟嘗君がピンチの時がありました。孟嘗君はわずかになった仲間と一緒に敵から逃げて、函谷関という関所にたどりつきました。後方からは追手がせまってきています。孟嘗君はその向こう側に行きたいのですが、あいにく夜中で、函谷関は朝にならないと開きません。どうしようかという時に、あの鳴き声の上手い彼が名乗り出ます。そして見事、鶏をまねて、函谷関の衛士をだまし、いち早く関所を抜けることができました。追手から逃れることができ、孟嘗君は彼のことを「先生は命の恩人だ」と感謝したという話です。

これが、「とりのそらね」のゆえんです。ただし清少納言はこれを反対の意味で使っています。「そのように中国の故事ならうまくいっても、私の場合はだまされませんよ」と。そして相手からの恋の悪ふざけをシャットアウトした、という話です。

なお、清少納言の名前の「清」は、清原の姓の省略です。前回、前々回とした歌の作者、清原元輔は清少納言のお父さんで、深養父はひいおじいちゃんです。その歌も合わせて、もう一度おさらいしました。SちゃんとM君がさっそく全部覚えて言えていました。

夏の夜はまだよひながらあけぬるを 雲のいづこに月やどるらむ (清原深養父)
ちぎりきなかたみにそでをしぼりつつ すゑの松山なみこさじとは (清原元輔)
夜をこめて鳥のそらねははかるとも よにあふさかのせきはゆるさじ (清少納言)

後半は、芥川龍之介の『煙草と悪魔』を朗読しました。以前、『蜘蛛の糸』の絵本を読んだ時に、ちらっと『煙草と悪魔』のことを言った生徒がいたので、今回それを持ってきました。文庫本だと8ページぐらいですが、低学年には十分高いハードルなので、漢字には全部ルビを振って、多目に時間を取って読みました。

有名な話なので内容は割愛します。最後に、悪魔は結局、人間から魂を奪うことに失敗します。ただその後で、人間たちが喜んで煙草を栽培し、それが全国に広がったところを見ると、果たして悪魔は失敗したことになるのかどうか、という作者の感想が述べられています。

そこでHちゃんが、「それって負けるが勝ちってことやん!」と言ってしめくくってくれたことが印象的でした。

話の全体としては、悪魔が正体を現すところが、一番引き込まれたようでした。