「山びこ通信(2014年度冬学期号)」より、下記の記事を転載致します。

山の学校ゼミ『社会』          担当 中島 啓勝

 時事ニュースの解説と課題図書の講読の二つを軸に進めているこの授業では、ここ数期にわたりイスラム世界についての話題を取り上げる機会がますます多くなっています。自分で授業を展開しておいてこんなことを言うのもおかしいかもしれませんが、必ずしも日常的にイスラム教について強い関心を持っていたとは言えない受講者の皆さんに、ほぼ毎週のように中東や北アフリカ、または東南アジアで起こっているイスラム関連のニュースを解説するのはやり過ぎかも、と感じるほどでした。しかし、皆さんもニュースなどでご存じの通り、私たちの住むこの日本の政治状況から見てイスラム世界で起こる諸問題はもはや無関心を決め込むことが許されない、無理解や無知が事態を悪化させかねない、そんな喫緊の課題となりつつあります。この授業では多様な意見のバランスを欠くことなく、宗教や文化的な価値についても解説を重ねながら、比較の視点をもって多面的かつ複合的にニュースを分析し、ディスカッションをしていくように心がけています。また、これまで通り、グローバル政治経済に関する大きなニュースについてはテレビや新聞ではあまり詳しく取り上げられない背景にも深く触れながら紹介していこうと思っています。
 ニュース解説と並ぶもう一つの柱である課題図書の講読についてですが、これまでは歴史関連の書籍を取り上げることが多かったので今学期は少し趣向を変え、現代の日本をテーマにした本を選んでみました。昨年中頃に発表され今なお大きな反響を呼んでいる、増田寛也編著『地方消滅』(中公新書)です。岩手県知事や総務大臣を務めてきた編著者が中心となって行われた調査「増田レポート」をもとに、日本が非常に厳しい人口減少社会の時代に突入する、いや、既に突入しているというデータを紹介しています。少子高齢化という現象については皆さんも身近な問題として感じることが多いと思われますが、実は全国で若者どころか高齢者すらも急減していく市町村、「消滅可能都市」が大量に発生しつつあるというのです。今まで「限界集落」と言えば、山奥や離島などのかなりひなびた一部の地域の話だと感じていた人も多いかと思います。しかしここで提唱されている「消滅可能都市」とは、そうした予想をはるかに越える規模と数、そして分布を示しています。その数、何と896。この急激な人口減少社会への転落がどのような帰結をもたらすのかを予測し、政策提言に繋げようというのが、本書の目的です。
山の学校ゼミ(社会)では、この本の講読を通じて社会問題としての人口減少についても学びながら、「子育て支援」「介護問題」「移民受け入れ」などのキーワードを織り交ぜながら受講者の皆さんと議論を進めていく予定です。特に、京都という地域の強みや特色、しかしその裏にある隠れたリスクなどについても考えていきたいと思います。興味のある方の参加をお待ちしております。

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