福西です。先月のことになりますが、『原論』第3巻の最後にある命題36と37を証明しました。これで第3巻をひとまず読み終えたことになります。中学3年生のR君に、改めて拍手を贈りたいと思います。

さて、命題3.36とは、方べきの定理の系(一方の直線が接している場合)です。

以下のような図において、「もし直線PCが円に接しているならば、PA・PB=PC2が成り立つ」ことをいいます。

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また、命題3.37は、3.36の逆です。

今度は直線PCについては、接しているかどうかは分からず、「もしPA・PB=PC2が成り立つならば、直線PCが円に接している」ことを示します。つまり、∠PCOが直角であればいいということになります。(ここで、命題3.16「円の直径にその端から直角にひかれた直線は円に接する」を使っています)

ちょうど第1巻の終わりが、三平方の定理とその逆の証明であったように、第3巻は上の二つの定理が必要十分条件であることの証明にあてられています。

実は、方べきの定理は、以下の証明で見ていくように、三平方の定理から導くことができます。つまり、方べきの定理とは、三平方の定理の言いかえというわけです。

また、『原論』の第1巻から第3巻に書かれている内容をもし一言で翻訳するならば、「平面上の幾何とは、すなわち三平方の定理が成り立つような幾何のことである」ということになります。裏を返せば、そこに書かれた多くの命題は、三平方の定理の表現のバリエーションを調べているということになります。

三平方の定理が、ユークリッド幾何(平面幾何)全体をどこまでも貫いている中心テーマであることを実感することは、一つの楽しい味わい方であるとも言えるでしょう。(ただし『原論』自体には、そのあとも数論や空間図形の命題が含まれています)

さて、R君と一緒に考えた証明を以下に付します。

命題3.36の証明

「もし直線PCが円に接しているならば、PA・PB=PC2が成り立つ」

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今記号をおき、PA=a、PB=b、PC=cとする。

すなわち、ab=c2を示す。

また、円の中心をOとし、Oから直線PBに垂線をひいて、その交点をDとする。

直線PCが接するということは、∠PCO=90°。よって△PCOは直角三角形であり、三平方の定理が成り立つ。

また、△DPO、△DAOも直角三角形であり、三平方の定理が成り立つ。

ここで、円の半径をr、OD=h、DA=xとおく。△OABは二等辺三角形なので、DB=DA=x。(命題1.10より)

△DAOにおいて、

h2=r2-x2

△PCOと△DPOにおいて、

PO2=c2+r2=(a+x)2+h2 。

上式にh2=r2-x2を代入して式を整理すると、

c2+r2=(a+x)2+r2-x2

c2=a2+2ax。

一方、ab=a(a+x+x)=a2+2ax。

よって、ab=c2

これが示すべきことであった。

 

命題3.37(36の逆)の証明

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先とほとんど同じ図に見えるが、∠PCOについて、90°であるかどうかはまだ分からない。これが今から示すべき内容である。

また、ab=c2は先に成り立っており、使ってよい関係式。

∠PCO=90°であるためには、△PCOが直角三角形であること、すなわち三平方の定理PC2+OC2=PO2が成り立つことを示せばよい。(命題1.48の三平方の定理の「逆」より)

PC2+OC2=c2+r2

一方、

PO2

=(a+x)2+h2

=(a+x)2+r2-x2

=a2+2ax+r2。…(1)

今、ab=c2より、

ab=a(a+x+x)=a2+2ax=c2

c2=a2+2ax。

よって、(1)式に上式を代入し、

PO2=c2+r2

よって、PC2+OC2=PO2

これが示すべきことであった。

 

【補足】

命題3.36は、「相似」の考えを使うと、△PAC∽△PCBより、a:c=c:b、すなわちc2=abであると、一発で証明できます。

ここで、二つの三角形が相似であることを示すには、二組の角が等しいことを証明します。

図では、∠Bが共通、そして∠PACと∠PCBが「接弦定理」によって等しいことを使います。ご興味のある方はぜひご自分でも確認してみてください。

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