「山びこ通信(2014年度秋学期号)」より、下記の記事を転載致します。

『中学英語』(1年)『高校英語』(1年)

担当 吉川 弘晃

 1年生。始まりの年であり、そこからは無限の可能性の道が伸びているように見えます。しかし、実際に1人の人間が1日に行えることは限られており、従って自分の望む結果が短期間のうちに叶えられることはほぼありません。英語の学習も同様、自分がいかに限られたことしかできないかを認識する点が重要です。しかもこの「認識」ですが、「分かっちゃいるけど手が動かない」という段階で終るのではなく、限られたことしかできないのならば毎日少しずつ学習するという実践の段階まで引き上げて初めて意味があります(私自身、これが「言うは易し行うは難し」であることを日々痛感しておりますが・・・)。

 具体的な学習方針ですが、演習中心だった去年とは大きく変更し、日々の授業は学校の教科書を徹底して正しく読むという点に重心を置いています。中学も高校も共に教科書本文の音読を講師と生徒が一緒になって行います。これは本文を日本語に翻訳して終わるのではなく原文の英語のリズムと共に理解することで、英語を正確に読むという行為を学ぶことを目的としています。まずは日本語に訳さずに音読、次に一文ずつ読みながら日本語に訳し、そして最後に文全体を音読するというのが、授業全体の流れです(なお、高校クラスでは英文の構造を身体で理解してもらうために本文の筆写も同時に行っています)。

 特に注意しているのが、itやthisといった指示語が文中でどういう働きをしているのかを生徒さんご自身に理解してもらうという作業です。この作業は時間がかかりますし、会話中心で文章も短いため指示語の示す内容が分かりやすい中学生の教科書でやる必要があるのかと疑問に思われる方々も少なくないかと思われます。しかし、日常生活のことを考えればこの訓練の重要性はやはり重要だと思われます。私たちは、毎日の日本語での会話で「これ」や「あれ」といった指示語を半ば無意識に使っていますが、たまにそれらが何を指しているのかが分からなかったり、話者同士の間で誤解が生じたりする結果、コミュニケーションが混乱してしまうことがあると思います。日本語の簡単な会話でさえ、そうした誤解が発生するのですから、多くの生徒さんにとって不慣れな言語である英語で起こらないわけがありません。

 教科書の文章を一文一文、丁寧に声に出して紙に書いて日本語で理解してリズムを英語で身につける。こうした作業に時間をかけられるのは受験勉強まで比較的余裕がある1年生の特権です。2年生後半以降になると、受験対策に多くの時間を割かねばならない以上、以上のような学習方法だけではやっていけなくなるのも事実ですが、教室での勉強で大事なのは、「自分が何ができないかを理解すること」です。もし、3年生であっても文章の意味が分からないのであれば、いつでもこの学習方法に戻ってくれば良いのです。

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