『山の学校ゼミ(社会)』クラス便り(2014年11月)

「山びこ通信(2014年度秋学期号)」より、下記の記事を転載致します。

『山の学校ゼミ(社会)』

担当 中島 啓勝

 政治・経済・文化など、多岐にわたるグローバルなニュースの解説と、歴史や思想を中心とした課題図書の講読、この二本立てで行っているこの授業も開講から早三年が過ぎようとしています。これまで継続して受講して下さっている三名の方々とはかなりの議論を重ねてきましたので、新しいニュースを見る際にも 「ああ、これは以前のあの話題と地続きの問題だな」という共通了解が生まれやすくなりました。また、 ある地域の経済問題を扱っても、「じゃあこれは他の地域にはどんな影響を与える可能性があるだろう?」 「外国の政策担当者たちならきっとこう考えるんじゃないか」など、比較の視点を持ちながらニュースを 分析するという習慣を持って頂けていることを実感しています。

 例えば、混迷深まるシリア・イラク情勢について取り扱うことが最近多かったのですが、以前から一緒に 「アラブの春」の動向を定点観測的にチェックしてきたことや、または課題図書の講読でアフガニスタンの歴史について時間をかけて学んできたことが理解の大きな助けとなりました。シリアとイラクの現在だけ見ていても何が起こっているかわからない。この地域での出来事をもっと大きな地理区分の中に置いてみる、歴史を遡ってその連続性を確認する、こうした考え方がごく当たり前のこととして共有されるようになったことは、この授業の一つの成果ではないかと自負しております。

 しかし、メンバーが固定されたまま長い時間が過ぎるばかりだとマンネリに陥りやすいこともまた事実。そういう訳で、今年から新規の受講者の方に加わって頂けたのは我々にとっても非常に大きな変化でした。これまでの雰囲気にまた新たな風が吹き込みつつ、和気あいあいと授業を行っています。この紹介文で繰り返し書かせて頂いていますが、講師である私も含めて、異なる背景や関心を持つ社会人が五名も毎週同じ所に集まって、今まで必ずしも詳しくなかった海外事情について学び話し合う経験はなかなかに得がたいものですし、それも気軽に楽しく続けられているということは、ひとえに受講されている皆さんのおかげです。若輩者の私がむしろ皆さんの胸を借りて話題提供者としての腕を磨かせて頂いているのだと感じることも多く、もっと精進しなければならないと反省するばかりです。

 今後の授業内容ですが、ニュースに関しては、アメリカで静かに、しかし確実に始まった次期大統領選への動きを折に触れて紹介することが多くなると思われます。ポスト・オバマの時代はどうなるのか、注目です。課題図書は前学期の終わりから『イスラーム銀行 金融と国際経済』(小杉泰・長岡慎介著、山川出版社)を読んでおります。今後も受講者の方々と相談しながら、ジャンルの垣根なく興味の赴くままに色々な本を選んでいこうと思っています。皆様のご参加をお持ちしております。