「山びこ通信(2014年度秋学期号)」より、下記の記事を転載致します。

『イタリア語講読』

担当 柱本元彦

 前回に引きつづき三名でダンテの『新生』を読んでいます。かなり慣れてはきましたが、相変わらずのゆっくりペースで進め、三分の二ほど読み終わったところです。今年の二月頃にはじめましたから、一年間で終わるのか終わらないのか、ともかくまだ続きます。ですがクラス担当者としては、そろそろ次の作品の選択が気になってきました。一度<古典>に踏み出せばなかなか元には戻れない・・・。けれどこれはこれでいいのかもしれません。この世に生きているあいだに原文で読んでおきたい書物があります。どの本かはもちろん人によって違いますが、いずれにせよ<古典>からではないでしょうか。たしかに読むに難しく、会話に応用できるわけでもありません。けれども死ぬまでに読みたいという思いには、何の役に立つのかという問いは無用でしょう。何か月も前ですが山下先生に質問したことがありました。<処刑の直前までソクラテスは笛の稽古をしていた。今更どうして何のためにと尋ねる弟子に、生きているあいだにこの曲を覚えたいから、とソクラテスは答えた>というエピソードについて、いったいどこに書かれているのでしょうか、と。いろいろ調べてくださって、どうやら誰かが(おそらくシオランが)捏造したものらしいと分かりました。それにしてもまさにソクラテスに相応しい素敵なエピソードではないでしょうか。値千金の捏造です・・・。そういうわけで、どこまで続けられるか分かりませんが、<古典>にとどまろうと担当者は勝手に決心しつつあるところです。

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