『ギリシャ語初級』,『ギリシャ語初級講読』A・B・C,「ギリシャ語中級講読」クラス便り(2014年11月)

「山びこ通信(2014年度秋学期号)」より、下記の記事を転載致します。
「ギリシャ語初級」「ギリシャ語初級講読」(A・B・C)「ギリシャ語中級講読」

担当 広川直幸

 今学期が始まってから急遽開講が決まったギリシャ語初級では、受講生一名と水谷智洋『古典ギリシア語初歩』(岩波書店)を教科書にして、ゆっくりとしたペースで古典ギリシャ語の基礎を学んでいる。この授業(木曜日18:40から20:00まで)は来学期から教科書をPeckett & Munday, Thrasymachusに変更して再スタートする予定である。それに伴い受講生を募集するので、古典ギリシャ語に興味のある方はこの機会をお見逃しなく。
ギリシャ語初級講読Aでは受講生一名とソポクレースの『オイディプース王』を読んでいる。現在1300行近くまで来ているので、今学期終了とほぼ同じ時期に読了できそうである。主としているテキストはLloyd-JonesとWilson校訂のOCTである。註釈書としてはOCTのコンパニオンであるSophocleaとJebbとDaweをメインに用いている。校訂に関して執拗に検討しながら読んできたので、現行のOCT版がどのようなものであるかは大体理解できた。分かる人には分かると思うので敢えてそれをここに書くことはしない。『オイディプース王』の次に何を読むのかはまだ決めていないが、一言一句も忽せにせず綿密にテキストを検討することに興味がある人であれば参加を歓迎する。
 ギリシャ語初級講読Bでは受講生二名とプラトーンの『パイドーン』を読んでいる。テキストと註釈はBurnetとRoweを併用している。一回の授業(2コマ分)で一度に3ページ程度読み進めている。現在90cまで進んだので半分以上読み終えた。プラトーンのギリシャ語は古典期ギリシャ語散文の最高峰であると個人的には思うものの、『パイドーン』はやはり難しく、議論の前提を共有できないもどかしさを感じることが多い。講読と同時に地道に続けているNorth & Hillard, Greek Prose Compositionを用いた作文はExercise 87まで進んだ。
 ギリシャ語初級講読Cは今学期は開講していないが、来学期は『新約』の「ルカによる福音書」の講読を9章12節から再開する予定である。
ギリシャ語中級講読は受講生一名と『イーリアス』第22歌を一回に30行程度のペースで読んでいる。現在363行まで進んだ。テクストはM. L. West校訂のトイプナー版を、註釈はケンブリッジの黄色と緑のシリーズのI. J. F. de Jong, Homer: Iliad Book XXII を用いている。Westの校訂本は一般的な辞書や文法書で調べても分からない読みが採用されていることがあるので、必要な場合にはなぜそのような読みが可能なのかを解説しながら進めている。第22歌の次は第24歌を読む予定である。