『山の学校ゼミ(経済)』(クラス便り2014年6月)

「山びこ通信(2014年春学期号)」より、クラス便りを転載致します。

『山の学校ゼミ(経済)』 担当 百木 漠

山の学校ゼミ(経済)は今年の4月から新しく始まったクラスです。元々は3年ほど前に「経済学入門」という授業を私が担当させていただいていたのですが、現在ではそのクラスは「山の学校ゼミ(社会)」という名前に変わり、中島先生に引き継いでいただいております。私がこの4月からまた講師として復帰し、新たにこの「山の学校ゼミ(経済)」という授業を担当させていただくことになりました。よろしくお願いします。

このクラスでは、経済関連の時事ニュース解説とアダム・スミス『国富論』の講読を行っていく予定です。時事ニュース解説では、毎週私がその一週間にあった経済ニュース関連の新聞記事をコピーしてきて、それを受講者の方と一緒に読みながら、適宜解説を加えています。一方的にこちらが講師役になって教えるというのではなく、双方向的に受講者の方と議論をしながら、授業を進めていければと考えています。実際に、受講者の方のほうが現実経済の動きなどにお詳しく、こちら側がいろいろと教えていただく機会も多いです。

4・5月の授業では、消費税増税の影響や、大手企業の賃上げのニュース、外食産業での人出不足のニュース、日本のものづくり企業の生き残り戦術、タイのクーデターなどの話題を取り上げました。いずれも受講者の方と議論をするなかで、意外な方向へと議論が転がっていったのが面白かったです。できるだけ池上彰さんのようにわかりやすいニュース解説を目指しているのですが、受講者の方の関心や知識が思いのほか深いところにあり、なかなかディープな方向へと議論が進んでいくことが多かったです。私自身、現実経済の細かい動きなどはフォローできていないところもあるのですが、思想史や社会学などの知識を使って、できるだけ大きな視点から経済・社会・歴史の流れを説明するように心がけています。

アダム・スミスの『国富論』は言わずと知れた経済学の古典ですが、いま読んでみてもいろいろと新鮮な発見があり、興味深いです。『国富論』の第1章は分業の話から始まり、有名なピン工場の例が出てきます。近代以前には職人たちがピン製作のすべての作業をひとりで担当していたけれども、近代になって産業が発達してくると、ピン製作のそれぞれの工程を複数の人で分担して作業をするようになる。するとひとりの職人では一日に数百本程度のピンしか生産できなかったものが、ピン工場ではひとりの作業者あたり一日に数千本レベルでのピンが生産できるようになる。これが近代社会で生産力が向上する大きな要因であり、文明が発達する重要な原動力のひとつなのだ、とスミスは言います。このように「労動の発達」に文明社会の進歩の原動力を見る、というのが『国富論』の基本姿勢であり、個人的にも関心を惹かれるところです。

山の学校ゼミ(経済)は現在のところ、受講者の方が一人と少し寂しい状況なので、まだまだ受講者を募集しております。途中参加も歓迎ですし、経済について全く知識がない方も、経済についていろいろ議論したいという方も歓迎です。申込みお待ちしております。