『中学理科』クラス便り(2014年2月)

『山びこ通信』2013年度冬学期号より、クラスだよりを転載致します。

『中学理科』 担当:高木彬

このクラスはM君とのマンツーマンでした。受験が目前に迫っているということで、冬学期は問題演習に徹しました。おもに取り組んだのは、「宇宙と地球」、「物質の姿」、「原子と分子」といった単元です。とくに「原子と分子」については、本人が苦手意識を持っておられたので、解説を交えつつ、時間をかけて進めました。
M君の課題の一つは、問題文を読み飛ばしてしまう傾向があるということです。たとえば、「酸化銅と炭素の反応によって発生する気体の化学式を書きなさい」という問題があります。酸化銅は銅へと還元され、炭素は二酸化炭素へと酸化します。発生する気体の化学式を書け、というのですから、答えは二酸化炭素の化学式「CO 」になるはずです。しかし、問題文をさっと読んだだけでは、ともすると「酸化銅と炭素の反応の式(化学反応式)を書く」と捉えてしまい、「2CuO+C → 2Cu+CO 」と解答してしまいます。問題文に「式」という字を見れば、項と演算記号のある一連の列を思い浮かべるのも無理もありません。しかし「化学式」と「化学反応式」は別物です。彼の場合は、解答する力は十分にあります。問題文をしっかり読めば、こうした勿体ないミスは防げるはずです。
問題演習に徹するなかで得たことの一つは、自分のウィークポイントを自覚できたことでした。それを自覚しているのとしてないのとでは、雲泥の差です。自覚することによって、ミスの多くは未然に防げるようになるでしょう。そして、彼の善きところは、そうした事実を認める素直さを持っているということです。「問題文をきちんと読まんとな」と、彼は自分に向かって言うことができます。その精神を持っているかぎり、彼はつねに自分の姿勢を律していくことができるでしょう。
この記事を書いている現在、彼は受験の直前です。そしてこの記事をあなたにお読みいただいている頃、彼の結果は出ているはずです。良い結果を願うばかりですが、それがどのようなものであれ、この徹底した問題演習の果てに得たものは、きっと失われることはないでしょう。