『ユークリッド幾何』 (担当:福西亮馬)

ユークリッド幾何では、1年生には『原論』の第1巻の命題を証明してもらっています。前学期には、対頂角、錯角、同位角がそれぞれ等しいこと、また三角形の内角の和が180°であることなど、最も基本的な定理を示してもらいましたが、今はそれらを駆使して、三角形の合同条件、また二等辺三角形についての定理を証明してもらっています。

1年生のR君は、ある時から、背理法による証明が得意になってくれました。背理法では、「AであるならばBであること」を示すために、まず「Bでない」という仮定をおきます。そして「Aでない」ことを導いて、「Aである」という先の前提と矛盾することを示します。つまり、その矛盾の原因は何だったのかとたずねると、そもそも「Bでない」という仮定が間違っていたことになります。すなわち「(Aであるならば)Bである」ことに他ならないわけです。どうしてR君がこの方法を気に入ってくれたのかは分かりませんが、とても大きな「勝ち癖」です。ぜひ自家薬篭中にした方法で、ばっさばっさと『原論』の命題を解き明かしていってくれることを期待しています。

3年生のA君には、『原論』の第4巻から、垂直二等分線や、角の二等分線といったすでに学校で習ったことを手始めに、円の接線や三角形の内接円、外接円、正多角形の作図法を記してもらいました。これらコンパスと定規を使う話は、幾何でしか役に立たない蛸壺的な「技術」に思えますが、実は、有理数を係数とする方程式の解(「代数的」数とよばれるもの)と深く結びついています。そのような話もいつかできればと思います。今は第6巻にある「世界最古のアルゴリズム」と言われている、ユークリッドの互除法について議論しています。実は、先の作図法も、アルゴリズムの一種です。

アルゴリズムと言えば、「こうすればうまくいく」という一連の手順を書いたマニュアルのようなものですが、作図法にせよ、互除法にせよ、学校で習った時点では、「なぜそれでうまくいくのか」までは分からず、使い方の理解で止まってしまっている生徒が多いのではないかと危惧します。一方で、A君は、あくまで自分の納得のいく言葉で、なぜそれを切り口にして考えたのかという理由まで掘り下げた答案を書いてくれます。A君にとって、そうした一種哲学的な議論は、むしろうってつけなのだろうと思います。

またこのクラスでは、時折、数論的なトピックに触れることもあります。この間は、ABC予想についてニュースが報じられましたが、その時はエラトステネスのふるいや素数の話を取り上げました。そのついでに(これは帰り際でA君だけ残っていた時ですが)、ABC予想からフェルマーの定理が証明できることも話しました。そしてガウスの「数学は科学の女王であり、数論は数学の女王である」という言葉を紹介するなり、A君は「そのように数学って、一つにつながっているのですね」と答え、打てば響くようだと感じました。

(福西亮馬)

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